「テレビのパネルなんて儲かるわけがない」
亀山工場の従業員にも話を聞いた。ある若手社員はこんな思いを語った。
「子供の頃、『世界の亀山』と呼ばれていたのをすごく覚えています。パネル事業の縮小は悲しいが、少しでも長続きさせられるよう頑張りたい」
一方、長く亀山工場での仕事に従事してきた50代社員の表情は暗い。
「液晶のシャープ、世界の亀山なんて昔の話。(2009年に)堺工場ができた時でさえ、『なんでやねん』と思った。テレビのパネルなんて儲かるわけがないと思っていた」
液晶事業の縮小で、「一部の人材をソニー系の半導体工場に出向させることも検討中」とも報じられた。絶頂期においては競い合う“仇敵”だったソニーへの出向は気が重いのではと思いきや、当の本人たちは冷静だった。
「ソニーへの出向は数十人規模という話。新しい場所で学べるチャンスとポジティブに捉えたい。私は行くことになっても構わない。ある程度能力があって、他社でスキルを上げて会社に貢献できそうな人が選ばれるようです」(別の50代社員)
この質問を投げかけた別の40代社員の言葉が寂しくも印象的だった。
「こうなることは何年も前から分かっていたことなので、転職する人はもうとっくにしている。今残っているのは『シャープで働きたい』という気持ちの強い人ですよ」
■〈【全文公開】シャープの“液晶敗戦”と栄枯盛衰年表 工場勤務社員たちの想いと町田勝彦・元社長が語る「失敗の本質」〉を読む
※週刊ポスト2024年6月7・14日号