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介護業界の人手不足と高齢化で「訪問介護」が危機に 83歳のヘルパーが同世代を担当、プロの現場も“老老介護”状態

訪問介護サービスの基本報酬が引き下げで現場は疲弊している(「NPO法人グレースケア機構」のスタッフ)

訪問介護サービスの基本報酬が引き下げで現場は疲弊している(「NPO法人グレースケア機構」のスタッフ)

夫から「それ以上やるとお前の身体が心配だ」

 島根県浜田市にある「ヘルパーステーション花笑み」で現役ヘルパーとして汗を流す畑岡しのぶさんは、今年83歳を迎える。5人の利用者を担当しており、全員が畑岡さんと同世代だという。“老老介護”とは高齢の夫婦や親子など家族介護を念頭に置いた言葉だったはずだが、プロによる介護の現場にも“老老介護”が出現しているのだ。畑岡さんは毎日、自身で軽自動車のハンドルを握り、訪問先に向かう。

「以前は週に6日働いて、10人ほどを担当していたのですが、寄る年波には勝てず、今は少し減らしてもらっています。私はヘルパー2級の資格しか持っていません。うちの事業所では6割以上のスタッフが介護福祉士の資格を持っているので私も挑戦したいと夫に相談したのですが、『それ以上やるとお前の体が心配だ』と止められました」(畑岡さん)

 訪問先での介護が終わると、事業所に戻って書類の整理をする。

「年々小さな字が見えにくくなっています。どれだけ続けられるかわからないけど、待ってくれている人もいるから、体が動くうちは頑張ろうと思っています」(畑岡さん)

 訪問介護の現場は、こうしたギリギリのバランスで成立しているのだ。

後編へ続く

※週刊ポスト2024年6月7・14日号

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