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【介護業界の危機】基本報酬引き下げで訪問介護から手を引く経営者が増加、円安で人材の海外流出も懸念

円安で外国人ヘルパーも雇いにくくなる

 介護業界の人手不足をめぐっては外国人労働者の雇用が解決策の一つになると期待されてきた。前出・柳本氏も「これまで3人の外国人ヘルパーを雇ったことがある」と話すが、今後も有効な手段となるかは不透明だ。介護アドバイザーの横井孝治氏は言う。

「ワーキングホリデーの制度を使ってオーストラリアなどで働く日本人介護職の例を見ると、円安が進んだことにより月額50万~80万円を稼ぐケースもある。一方、日本の介護職員の平均的な月収は20万~30万円弱です。外国人ヘルパーにしても、介護先進国である日本で修業して、その後は給料のいい海外に流れてしまう人が増えるのではないか」

 ホームヘルパーに頼れなくなった場合、介護保険サービス以外の利用も考える必要が出てくる。前出・横井氏はこう言う。

「家事や軽作業を請け負ってくれる公益社団法人の『シルバー人材センター』が各地域にあるので、こうした仕組みを使う選択肢が出てくる。ただし、自費サービスなので全額自己負担になります」

“カネがなければサービスを受けられない”という状況になる可能性があるのだ。柳本氏はこう嘆息する。

「訪問介護以外のサービスを同時に運営し、そちらの収益で訪問介護が苦しいのを補うなど、現場は知恵を絞ってやっています。しかし限界はとっくにきている。当然ながら、現場が疲弊すると、困るのは利用者さんです。良質なサービスの提供のために、政府は適切な策を早く講じてほしいと切に願っています」

 ニッポンの介護はいま、重大な岐路にある。

(了。前編から読む

※週刊ポスト2024年6月7・14日号

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