中国にも伝播する“エヌビディア祭り”。先を見据えた銘柄探し
中国でもいわゆる“エヌビディア祭り”が伝播している。こちらは少し先を見据えた銘柄探しが盛んだ。
エヌビディアについて、Arm社が開発したCPU「Grace」1個と新たに開発した画像処理半導体「ブラックウェル」2個を1つにパッケージした新製品「GB200」が、2024年下期には出荷される見込みだが、この「GB200」は推論能力が最大30倍高まり、エネルギー消費は25分の1に抑えられる。推論のリアルタイム性が格段に高まり、低遅延GPU通信を提供し、高速なトレーニングが可能になるとあって、需要は非常に強いと多くのアナリストが予想している。
データ通信に関する需要が急増することになるのだが、銅線高速接続は光ファイバーによる接続と比べ、コストが安く、電力消費量が少なく、配線、メンテナンスが容易であるといったメリットがある。しかし、電磁干渉の影響を受けやすいといったデメリットがある。そこで、この電磁干渉を遮断する技術を提供できる中国企業として科創板に上場する飛栄達、隆揚電子、中石科技などに注目が集まっている。
バイデン政権は2022年10月からAI向け先端半導体の中国への輸出を原則禁止した。これに対して、エヌビディアはこの規制を回避し規制基準を下回るGPU(A800、H800)を中国向けに開発し販売を再開したものの、2023年10月には規制が強化され、これらの製品についても中国への輸出が禁止された。
現状において、GB200が中国企業に販売される可能性は限りなくゼロに近いものの、そのGB200の急拡大を通じて、中国企業の電磁遮断のための製品の需要も急増する可能性がある。そもそもエヌビディアは生産の大部分を台湾企業TSMCに委託している。
ハイテク産業の国際分業は米国政府の役人が考える以上に高度に、複雑に進んでいる。2022年における中国製造業の名目GDPは米国の1.9倍に達しており、中国の製造技術抜きに電子部品の量産を行うことは不可能に近い。AI産業においても米中分離は容易ではない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。