基準期間である前々年度の売上が1000万円を超えていた
そうしたなか、一旦は「2割特例」の適用を受けて消費税を納付したにも関わらず、後に適用外ということが発覚し、消費税を追加で納付することになったという人がいる。
都内に住むフリー編集者のAさん(40代女性)は、昨年インボイス発行事業者に登録し、今年の確定申告で初めて消費税の申告を行った。
「毎年、税務署で相談員の方に教えてもらいながら確定申告をしています。令和5年の売上は約870万円でした。消費税の申告は初めてでまったくわからない状態だったんですが、相談員の指示通り、2割特例が適用されて令和5年の10月から12月の売上に対する消費税を4万円ほど納付しました」(Aさん・以下同)
しかしその後、Aさんのもとに税務署から連絡があり、2割特例の対象外だったことが発覚。差額の消費税を追加で納付することとなった。
「実は令和3年に売上が初めて1000万円を超えていたんです。その時点で令和5年は1年通して“課税事業者”になっていたということ。それまで売上が1000万円を超えたことがなく、消費税を納税したこともなかったので、“インボイス登録して初めて課税事業者になった”と思っていたんですが、そういう話ではなかったようで……」
個人事業者の場合、申告する年の前々年の事業年度を「基準期間」とし、その基準期間で売上が1000万円を超えていた場合、インボイス登録に関係なく課税事業者となる。基準期間の売上が1000万円を超えていた場合、インボイスの2割特例は適用されない。
つまりAさんの場合、基準期間である令和3年の売上が1000万円を超えていたため、令和5年は課税事業者となり、インボイスに登録しているか否かにかかわらず、令和5年分は消費税を納付しなければならなかったのだ。
「初めて課税事業者になったタイミングとインボイス登録のタイミングが重なってしまっていたということです。今思えば、確定申告に行ったとき、税務署の相談員の方から、基準期間の売上が1000万円を超えているかどうか質問されたような気もします。でも、これまで消費税を申告したこともなかったので、基準期間のことをしっかり理解していなくて、ちゃんと答えられられなかったんだと思います」