個人消費が盛り上がらなくても民間の設備投資の伸びが期待できる
日本株に上昇が期待できる要因はそれだけではない。
米中対立に始まり、いまや米国を中心とするNATO陣営と、中国・ロシアを中心とする陣営とで「新冷戦構造」が生まれ、経済圏の分断が進んでいる。とりわけAIに不可欠な半導体をめぐっては、米国が対中包囲網を強化する一方、中国も自前のサプライチェーン(供給網)の構築を急ぐなど対立が激化している。そうしたなか、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が熊本県に進出したように、日本が中国に取って代わる生産拠点となりつつあり、製造業の国内回帰が進んでいる。
そうなると、内需では個人消費が思ったように盛り上がらなくても、民間の設備投資の大きな伸びが期待できるだろう。外需では円安メリットを享受できる日本企業の業績拡大も望め、これもまた日本株にとっては追い風となる。
GDPの過半を占める個人消費が低調で、多くの個人にとっては“実感なき景気回復”となる公算が大きいかもしれない。一方で、日本株にとっては、企業の設備投資が爆発的に増え、円安メリットも享受できる環境にあるのだ。
長期では「日経平均20万円」になっても不思議ではない
そうした点も踏まえて2024年下半期の日本株の推移を予測すると、日経平均も年内には4万4000~5000円への上昇は見込めるだろう。
さらに、この先もインフレが進むことで今後10年の間に日経平均が10万円、あるいは20万円になっても不思議ではない、というのが私の見方である。過去の日経平均の推移を見ると、2008年のリーマン・ショック後の7000円割れから5倍を超える水準まで上昇している。日経平均4万円から10万円は2.5倍、20万円は5倍なので、そこまで上昇するという予測も、十分、現実味のあるものではないか。
インフレが進み、円安、株高基調が当面続く見込みである以上、タンス預金はもとより銀行預金頼みでは手元のお金が目減りするだけ。投資をしなければ置いて行かれてしまう時代が到来しようとしている。幸い、今年1月からは新NISA(少額投資非課税制度)がスタートし、投資に適した環境が整いつつある。運用益や配当益が非課税になる新NISAは、まさに“渡りに船”といえるのではないか。
インフレの加速に伴う長期的な株価上昇がまさに始まろうとしている現在、「投資は怖い」などといっている場合ではないだろう。長期的な株高の恩恵を受け、そのなかでも世界的な潮流や日本の国策に沿うような「大化け」も期待できる銘柄はいくつもある。そうした具体的な銘柄については、別の記事で紹介したい。この先の人生でさほど多くない投資チャンスをくれぐれも逃さないよう目を凝らしてみてほしい。
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【プロフィール】
藤井英敏(ふじい・ひでとし):1965年生まれ。日興証券、フィスコを経て、カブ知恵代表に。個人投資家向けに各種レポートの作成・販売を行なう。