インバウンド客向けの店と地元商店との軋轢
さらに大きな問題になっているのが、インバウンド客向けの店と古くからある地元商店との軋轢だという。老舗鮮魚店のオーナーはこう話す。
「コロナ禍の3年間で20~30軒が店を畳んでしまったが、そこに中国をはじめとする外国資本が入ってきた。その新規の店が外国人観光客向けに『インスタ映え』するデカいタラバガニや神戸ビーフの肉巻き、生ウニなどを5000円~1万円という高値で売り始めた。
日本人が見たら誰もが高いと思うが、今は円安もあって外国人観光客の財布のひもは緩み、高値の店が繁盛している。でも、それで『安価で新鮮』という黒門市場のイメージが崩れ、地元の常連客や日本人観光客の足がどんどん遠のいているんです。昔からある店で、外国人観光客向けに商売していない店は、常連客の激減により売り上げが落ち、店を畳むしかなくなっている」
一方、インバウンド客向けの店舗を営む店主も背景をこう明かす。
「地元向けだったところが店を畳むと、大抵はそこを1棟貸しに出すのですが、最近の相場で家賃は月50万~200万円ほどになる。高い家賃で利益を出すには、単価を高くするしかないんです」