公立学校の先生は、残業しても残業代がもらえないのです。その代わり、自治体の条例で定める給料の4%を基準とする教職調整額が支給されます。また、『給特法』の適用がある公立学校の場合でも、実情はともかく、文科省の説明では残業を命じることができるのは、実習や学校行事、職員会議、非常災害などに必要な業務に従事するケースであって、臨時または緊急のやむを得ない事情があるときに限るとされています。
なお、『給特法』の適用がない私立学校では、教職調整手当の支給はありませんが(学校によっては固定残業代の支給がある場合も)、残業を命じた学校側には、当然に残業代の支払い義務が生じます。
この『給特法』を念頭に置く塾の経営者側の主張は誤りです。講師に残業を命じたのに『給特法』を根拠にして残業代の支払いを拒否することはできず、その不払い行為は犯罪となります。早急に、基準監督署に相談してください。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年6月21日号