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「このままでは米国のIT植民地になる」モバイル苦戦の楽天・三木谷浩史氏が募らせる日本の携帯事業への危機感

三木谷氏はヴィッセル神戸のオーナーでもある。2004年、イルハン・マンスズ選手の移籍記者会見で(時事通信フォト)

三木谷氏はヴィッセル神戸のオーナーでもある。2004年、イルハン・マンスズ選手の移籍記者会見で(時事通信フォト)

意外と知られていない、楽天モバイルの革新性

 今では辺境の国や地域で暮らす子供たちであっても、インターネットとスマートフォンさえあれば、世界最高の学習コンテンツに接することができる。そうした高速道路をも凌駕する重要な社会インフラのサービスとシステムが、限られた通信事業者によって寡占化されているのは問題だった。

 また、既存の通信事業者の基地局のシステムが、「専用ハードウェア」というブラックボックスに頼っていることも、大きな課題だと感じた。というのも、通信事業者は自身の持つ基地局のハードウェアをNECやノキア、エリクソン、ファーウェイといったメーカーに外注している。それでは原因のわからない大きな障害が起きてしまったとき、自社だけでは迅速に対応ができない。

 そこで楽天モバイルは、従来の「専用ハードウェア」に頼るのではなく、ハードウェアとソフトウェアを分離し、「汎用ハードウェア」で運用する「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」の開発に挑んだ。通信機能を、シンプルに管理していくためだ。

「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」という世界でも先進的に商用利用を実現した技術の開発には、もちろんリスクがともなった。多くのユーザーがひとつの基地局に同時にアクセスし、そこで多種多様な情報を処理し、管理しなければならないモバイルネットワークは、当時、ソフトウェアでの管理・運用は不可能だと言われていたからである。

 しかし、インターネットの世界では専用機から汎用機への移行が進んだにもかかわらず、携帯電話のネットワークだけは専用ハードウェアでの運用のままでいいのだろうか──。

 その状況に変革を起こせる可能性に僕たちは賭けたわけだ。この技術を開発し広めることで、世界中のモバイルネットワークを民主化する。それが当時の僕が思い描いた「夢」であり「目的」だった。

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