インバウンド景気に沸く「なにわの台所」黒門市場。大阪・ミナミの繁華街(心斎橋・道頓堀・難波)に近い東西100メートル、南北400メートルにわたる商店街の中に7つの町会(北門会、末広会、長楽会、親栄会、日二会、黒門会、南黒門会)があり、鮮魚や野菜、精肉などの食料品を幅広く品揃えする店舗が170軒ほど集まっている。
しかし、7つの町会でつくる黒門市場商店街振興組合が作成する「黒門市場マップ」には120軒しか掲載されていない。なぜこのような現象が起きるのか。黒門町で飲食店を40年間続ける組合員のひとり(飲食店店主)に聞いてみた。
「外国人観光客を狙って新しく参入した店で、非組合員なんですわ。組合が作った『店舗マップ』には組合員の店しか載っていない。他の40~50軒は非組合員の店なんです。そういった店は組合費も払わないし、商店街のイベントにも参加しない。何かあれば一番に店を畳んで消えるパターンやろね」
家賃は最低でも月50万円、高いと200万円
高級料亭や割烹店の料理人が仕入れのために足を運び、地域住民が買い物に立ち寄っていた黒門市場だが、バブル崩壊やリーマンショックなどを経て、売り上げが激減。何度も危機を迎えている。そのたびに廃業する店が相次いでシャッター通りとなった。
そうしたなか、振興組合が中心となって外国人観光客を取り込むことで来場者の回復を図った。その戦略が見事に的中し、今では1日2万4000人ほどの外国人観光客が訪れるようになった。それに伴い、黒門市場の様子は一変した。店先で通路にはみ出すように椅子とテーブルを置いた店や、店内の狭いスペースにテーブルと椅子を置いてイートインスペースを作る店が登場し、外国人観光客が店頭で売っている商品を食べ歩くようになった。鮮魚店店主はこう言う。
「インバウンドの恩恵を一番受けているのが、廃業した店のあとに入ってきた屋台風の飲食店。多くが外国資本の店で、見栄えがするようにデカいタラバガニや神戸ビーフの肉巻きを数千円で提供している。ホンマに神戸ビーフなのか、という話もあるけど、組合に入っていないと付き合いもないからね」