老後資金を確保するために、いま話題の新NISAなどを中心に、投資を始めるシニアも増えている。しかし、60才以上の初心者が注意したいリスクの高い投資もあるのだ。
残された時間も、働く体力も、さらには気力も少なくなってくる60才以降にとって「ハイリスク・ハイリターン」な投資は御法度。その代表格が「FX(外国為替証拠金取引)」だ。
元手となる金額の最大25倍までを取引できる「レバレッジ」という仕組みにより、少ないお金でも成功すれば大きく儲けられる半面、一度の失敗が数百万~億単位もの莫大な損失につながることも少なくない。ファイナンシャルプランナーの野原亮さんが言う。
「FXで大きな利益を上げている人は10~20倍のハイレバレッジで投資していますが、失敗した際の損失も同じ倍率に膨らむと考えれば、シニアには到底おすすめできません。どうしてもFXで投資してみたいならせめてレバレッジは2~3倍程度に抑えるか、毎日や毎週、または毎月定額で買いつける『積立FX』が無難です」(野原さん)
配当金だけを見て判断すると痛い目を見る可能性
誰しもできるだけ早く資産を増やしたいと思ってしまうが、「甘い言葉」には要注意。株式投資では「高配当株で老後も安泰!」といったフレーズに目がくらみ、失敗するシニアが後を絶たない。『60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用』の著者で、IFA(独立系金融アドバイザー)のリーファス代表・西崎努さんが言う。
「高配当は“直近で配当を出せる余裕がある”ことの証明にはなりますが、その後も同じ状態が続く保証にはなりえません。中には“年5%の高配当をもらい続けていたが、しばらく見ないうちに株価が20%も下がっていて、結局大損してしまった”というパターンもある」
高配当を狙った投資は悪くはないが、配当金だけを見て判断すると痛い目を見る可能性があるということ。
「配当金だけでなく、せめて株価のチャートはチェックすべきです。いまの株価が過去と比べて高いのか低いのか確かめておき、大きく下がる前の軽いけがですんでいるうちに手放すことも考えてほしい。“今後も株価に影響するような重大な理由で下がったら売る”“買ったときから○%以上下がったら損切りする(売る)”という自分なりのルールを決めておかないと、大損しかねません」(野原さん)