自分好みを追求しすぎると出口戦略が立てづらくなる可能性も
自分でリフォーム・リノベーションを希望する際は、どこに水回りを配置して、どこに寝室を持ってくるかなど、考えているだけで夢が膨らむでしょう。
ただ、物件によっては水回りの位置を動かせないこともよくありますし、動かせても莫大なコストがかかる可能性が高くなります。配管を大規模に変更することになるので、リノベーション会社が施工に難色を示すケースもあるでしょう。
マンションの配管方式には床スラブ上配管と床スラブ下配管の2種類があります。床スラブとは構造躯体コンクリートのことで、配管がその上を通っているのか、下を通っているのかで方式が変わりますが、古いマンションは床スラブ下配管のことも多く、配管を変更しようとすると下の階の天井を開ける必要が生じるので、移動は現実的ではありません。
そもそも管理規約で水回りの移動を禁止しているマンションもあるので、規約のチェックも必要。ほかにも、換気ダクトが移動できるか、窓の変更ができるかなど、リノベーションを考えるうえで注意すべきポイントは数多くあります。
自分で住む物件なので、自分が好きなようにリノベーションしてもいいのですが、あまりにやりたい放題やって、万人受けしない間取りや内装にしてしまうと、出口戦略を立てづらくなることも覚えておきましょう。
大手デベロッパーの分譲マンションは没個性的な間取りや内装ですが、それは多くの人に受け入れられやすいからです。リノベーションによって、ドアで区切られた個室のない巨大な1LDKの間取りにしたり、収納をまったく作らなかったり、生活動線に配慮しなかったりすると、いずれ売却となったとき、購入を検討してくれる層が狭まります。
逆に、そうした個性的な作りを気に入ってくれる人もいるでしょうが、売却のチャンスは少なくなります。
そのため、たとえば個室を作らずに思いっきりリビングを広くしたいなら、後で簡単に間仕切り壁を付けられるようにするなど、一定の工夫は必要です。今は広いリビング、大きな収納、可変性の高い間取りが、多くの人に好まれるポイントなので、そのあたりは押さえながらリノベーションプランを決めていくのがおすすめです。
不動産コンサルタント・長嶋修さん
※長嶋修・著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館新書)より、一部抜粋して再構成
【プロフィール】
長嶋修(ながしま・おさむ):1976年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。1999年、不動産コンサルティング会社「さくら事務所」創業。著作に『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』など多数。最新刊は『マンションバブル41の落とし穴』。