世界の富豪ランク上位は企業の創業者が多く占める
羊城晩報が同花順iFinDのデータを使って、A株上場企業5300社強のCEOの年齢を調べたところ5月10日現在、平均では約55歳であった。日本と比べて圧倒的に若いというわけではないが、一方で1990年代生まれのCEOが57名いる(6月15日、毎日経済新聞)。創業者もいるが、同族系企業の二代目、三代目がほとんどである。こうした若い経営者たちの多くが米国、英国、オーストラリア、カナダなどに留学し、学位を取得している。
中国市場はその多くが生産過剰、過当競争状態にあり、民営企業が経営のかじ取りを少しでも誤ると簡単に倒産してしまう。ビジネスにおいて欧米の教育水準は高い。人脈形成に役立つ上に、そのカリキュラムが実用性に富んでいることを同族系企業の創業者たちはよく理解しているからこそ、子息を留学させる。
ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、6月13日時点でエヌビディアの黄仁勳CEOは世界第12位の富豪にランクされており、その資産総額は1100億米ドル(17兆2700億円、1ドル=157円で計算)に達する(6月13日、東方財富網、南方都市報)。株価の急騰によりこの1年半の間に資産は約930億米ドル(14兆6010億円)増加しており、この間、世界で最も多くの資産を増やした人物となった。
そのほか、上位にランクされているのは、アマゾン、テスラ、マイクロソフトなど、ほぼ企業の創業者であり、両親から資産を受け継いだ者は少ない。大富豪になることを人生の目標とするならば現在においても、理科系、文科系(ビジネス関連)を問わず、欧米に留学することが近道だ。
日本の海外留学生は世界46位
日中マスコミが発信する情報を比べてみると、日本は圧倒的に親米的な内容が多い印象だ。その効果もあって、若者の多くは欧米に親しみを感じているように思う。しかし、本当に欧米の優れたところを理解しているかどうか。
2021年における海外留学生の数を調べてみると、中国は102万1303人、インドは50万8174人もいる一方で、日本は2万9385人しかおらず世界で46番目、一つ上はパレスチナ、一つ下はスリランカといった順位である(UNESCO調べ)。新型コロナ直前となる2019年のデータでみれば日本の順位は少し上位にあるとはいえ、それでも39番目だ。この順位が上がってこなければ、グローバルレベルの富豪の数は増えず、イノベーションも起こりにくいだろう。
バブル経済を経験した多くの日本人が、国際競争力の強さの副作用として生じた円の急騰、円の強さに優越感を感じたことだろう。現在のように、円安が進行し、海外のモノ・サービスの相対的な高さを目の当たりにすると、敗北感さえ覚える。
もし、根本的な部分で長期の成長戦略を考えるのであれば、もっと多くの若者が欧米の大学に留学する気持ちを起こさせるようなことを思いつく必要があるのだろのではないか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。