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【ANYCOLOR、くら寿司、ナレルグループ】全体相場環境がさえない中、好決算発表でも割安感のある注目3銘柄を解説

くら寿司が東京・銀座に開業したグローバル旗艦店のすし屋台(写真:時事通信フォト)

くら寿司が東京・銀座に開業したグローバル旗艦店のすし屋台(写真:時事通信フォト)

 ここのところ軟調な展開が続いている日本株市場だが、その理由の一つとして、利上げへの警戒が挙げられる。直近で好決算を出した銘柄についても、業績を素直に反映して株価を伸ばすには至っていないようだ。では好決算を出した企業の中で、どのような銘柄に投資家は注目すればよいのか。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。

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 日本の株式マーケットは、半導体設計大手の英・ARMの大株主であり、ナスダック市場と最も連動すると言われるソフトバンクグループ(9984)が以前の記事でも書いた通り株価を上昇させているものの、全体的には苦戦を強いられている銘柄が多い印象だ。

 これはアメリカでは利下げ観測が根強いのに対し、日本では利上げ観測がカウントダウンに入っていることが原因と考えられる。日本で利上げが行われれば日米金利差は縮小し、円高、株安の環境が予想される。日本マーケットは今、リスクオンにはなれないマクロ経済環境となっていると言える。

 しかし、6月10日に発表された日本のGDPを見る限り、前四半期比、前年比ともに悪化しており、くわえて外需のかなめとなる自動車の不正認証問題による生産ライン停止の影響もあることから、実体経済が好調であるとはいえない。今すぐの利上げには踏み切れないのではないか。

 そのため、好決算を出したにもかかわらずあまり上昇していない銘柄については、良い買い場になる可能性は十分考えられる。そこで今回は直近で好決算を出した銘柄を3つ整理しておきたい。

【1】ANYCOLOR(5032)

 VTuber(バーチャルユーチューバー)グループ「にじさんじ」を運営し、グッズ販売が収益の柱となっている同社は、6月12日に2024年4月期の本決算を発表し、売上+26.3%、営業利益+31.4%、経常利益+30.6%、最終益+30.3%、EPS+26%という大幅成長となった。また、新年度においても売上+21.9%、営業利益+19.7%、経常利益+19.9%、最終益+18.7%、EPS+18.8%の成長見込みを発表している。キャッシュフローにおいても営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローともに良好であり、文句のつけようのない決算を出したと言える。

 同日には、発行済み株式総数(自己株式を除く)の6.4%にあたる大きな自社株買いの発表、そして2027年4月期に向けた「中期的な成長に向けた経営方針」において売上+88%、営業利益+94%の計画を発表した。このような好感材料が重なった決算翌日の6月13日には株価は前日比+500円(+21.15%)でストップ高をつけた。

 同社の株価水準で見ると、2022年10月に6898円の最高値を付けて以降、長い下落トレンドにある。6月13日にストップ高を付けた後の終値も2864円と最高値から見れば約40%の株価にまで落ち込んでいる。業績絶好調にもかかわらず株価が低迷し続けてきた同社がここからどこまで反転していくか注目したい。

【2】くら寿司(2695)

 回転寿司大手として有名な同社が6月10日に2024年10月期の第2四半期決算で、好業績を発表した。寿司チェーン関連銘柄には、スシローを営むFOOD & LIFE COMPANY(3563)や銚子丸(3075)、元気寿司(9828)が軒並み好決算を出したが、同社は業績に苦戦してきた経緯がある。

 ところがこの日発表した上半期業績は、前期比で売上+22.8%、営業利益2.3倍、経常利益2.5倍、最終益2.0倍、EPS2.0倍という大きな成長となった。

 業績好調の理由としては、「強みである『まぐろ』『かに』など質の高い商品を中心にしたフェアの展開、大人気キャラクター『ちいかわ』や劇場版が公開された人気アニメ『名探偵コナン』とのコラボ企画の実施により、売上高は好調に推移。経営と現場が一体となって、個々の商品ごとにきめ細やかな商品設計を適宜行った」としている。

 これにともなって、通期の見通しを売上、利益ともに上方修正している。これまで日本においては、こだわり志向の回転寿司店が一歩リードしていた印象もあるが、エンタメ色の強い同社がここにきて一矢報いてきた。

 ところが株価は、決算翌日の6月11日には2.3%安の100円下落、12日には▲3.2%となる140円下落、13日にも▲0.1%となる5円下落と、好決算翌日から3日連続での下落をしている。

 同社の業績水準、そして、同社が、高級志向の競合店と異なり、エンタメ志向であることは、昨今の原材料高の影響を受ける度合いが低いと考えることができる。ここから株価の反転も期待できるのではなかろうか。

【3】ナレルグループ(9163)

 建設技術者派遣、ITエンジニア派遣・システムエンジニアリングサービスなどを手掛ける同社は、人手不足を解決する人材業界の注目銘柄だ。同社は6月12日に2024年10月期第2四半期決算を発表したが、上半期業績で、前期比で売上+22.9%、営業利益+27%、経常利益+27.9%、最終益+27.8%、EPS+24.2%という大きな成長となった。

 同社の経済指標は6月12日時点においてPER12.2倍、PBR1.88倍、ROEは15.38%と非常にバランスが良く、また、利回り4.03%というのは魅力的である。

 決算翌日の6月13日においては日本の株式マーケットはほぼ全面安の様相となっていたものの、同社は+4.73%、129円もの上昇となった。

 株価水準は今年2月に最高値3890円を付けてからずっと下落を続けてきており、6月13日の終値時点でも最高値から約25%下げた水準になっている。今後も旺盛な人材需要に応えるべく好業績が期待でき、その都度、株価が見直されていくだろう。

まとめ

 日本の経済政策は利上げを控えているにせよ、まだまだ緩和政策が維持されることが大方の見方である。少し機運が変われば一気に株式相場にも資金が入ってくることになる。その時に大きくパフォーマンスを出す銘柄は好業績銘柄であると考えられる。相場環境が冴えない時こそ、好業績銘柄を監視し始める妙味があると考えられる。

【プロフィール】
古賀真人(こが・まさと)/個人投資家、経済アナリスト、会社経営者、投資系YouTuber。1978年、埼玉大学経済学部卒業後、国内大手金融機関、外資系金融機関勤務を経て独立し、株式会社ライフサポートを設立。25年以上の株式投資経験を活かし、チャート分析からはわからない経済分析、個別企業分析をYouTube「カブアカちゃんねる」で展開。全決算を最速分析しているnote「カブアカマガジン」(https://note.com/masatokoga)を日々更新中。

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