ネット通販が普及した今、大きくて自力では運べないようなものに限らず、日常のほんのちょっとしたものでもネットで買うようになったという人は少なくない。一方、“手軽になりすぎた”ネット通販から距離を置くことで、気づくこともある。
東京都在住の会社員・Aさん(30代男性)が暮らす1Kの部屋は、2階建てのアパートの1階。玄関を出たら“すぐに外”で、雨よけもない環境だという。
「宅配ボックスはなく、『置き配』は天気がよければ可能ですが、雨の時は完全に荷物が濡れるので、利用していません。とはいえ配達員さんの負担を考えると再配達も申し訳ない気持ちになってきたので、最近ネット通販は極力控えるようになりました」(Aさん・以下同)
それまでのAさんは、衣服、雑貨、日用品などをネット通販で購入することが多かった。しかし現在は、基本的に買い物は実店舗を利用するという。
「ネット通販を利用しないと決めてからは、服を買わなくなりました。これまでは、先にほしいものありきではなく、通販サイトで『ほしいものがないかな』と検索しながら、気に入ったものがあれば買うという感じでした。今はそもそも通販サイトを開かないので、“ほしいもの”にぶつかることもなくなりました。これまでネット通販で、“必要のない服”をたくさん買っていたんだなと実感させられました」
そんなAさんだが、夏の行楽に向けてサングラスを買おうと思い立った。これまでなら通販サイトで購入していたところだが、近所のショッピングモールに行った。
「2、3のお店を回って探したんですが、そこまでピンとくるものには出会わずじまい。実物を見ると『ちょっと違うな』と、買うまでには至らないんです。しかも店を回っているとだんだん疲れてきて、物欲も薄れていくというか……。結局まだサングラスは買っていません。ネット通販だったら確実にどれかを買っていたと思います。実物を目の前にすると冷静になれるのは、無駄遣いを防ぐためにもいいのかもしれません」