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名字をどうするかという問題に3度直面したオバ記者がつづる「わが姓の遍歴と夫婦別姓」

介護をどうするかまで法律できれいに決めてもらわないと話にならない

 7年前に年子の弟が亡くなってから、義父、母親と相次いで他界して、そのたびにお墓の納骨入れを開けると、私は笑いたくなるんだよね。なぜか。

 実はさっき、祖母はヤマザキと言ったけれど、戸籍上の姓はフクトミなの。子を4人産んだ後、夫のフクトミさんが亡くなったので、ヤマザキさんと再婚して3人の子を産んだ。その1人が私の父だけど、ヤマザキさんと入籍をしなかったのは「めんどくさかったからじゃね?」と母親から聞いた。

 というのも、ヤマザキさんは徳島の生まれで、鉄道工員として働きながら茨城まで北上して祖母と出会ったのだそうだ。徳島から戸籍を取り寄せる手間を省いた、いまでいう事実婚よね。そんなことができたのもわが生家が由緒正しい“馬の骨一家”だから。もっと言えば、7つの骨壺のうちの1つは生涯独身だった伯父のもので、あるとき東京の役所から「行き倒れになっている。遺骨を引き取ってくれないか」と連絡が来た。そして、母親の「しゃーんめ(仕方ないだろ)」のひと言で納骨された、なんてことがあったの。……という母親だって、嫁にきた家に義父を引き入れてちゃっかり再婚しているんだけどね。そのお気楽さを私はいいなぁと思うんだよね。

 とまあ、そんなわけで夫婦別姓って、私の生家のような土地もなければ金も名誉もない寄せ集め一家にとっては大昔からこだわらなかったこと。

 一方で、夫婦別姓になったときに納得いかない人の顔も浮かぶの。

 その人は「姓を名乗るということは墓を守る家督相続人になること」と言い聞かされて親の介護を引き受けた。なのに親が亡くなったら、結婚して別の姓を名乗っていた妹2人が「法定相続人としてキッチリ財産を分けろ」と言い出したのだそう。「姓を継いだからと安心していたオレがバカだったってあんまりじゃね? オレより両親を介護させた嫁さんに申し訳が立たなくて」と言うのは古い友人のOさん(68才)だ。

 姓の問題は単なる名字をどうするかではなくて、介護をどうするかまで法律できれいに決めてもらわないと話にならないと思うんだけどな。天下の経団連が「よし」とするとか関係ないと思う。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2024年7月4日号

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