この準委任には民法の委任の規定が準用されますが、委任では「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない」と定められています。つまり、当初に約束がなければ報酬請求権は発生しません。もっとも、自宅からの交通費など経費がかかっていれば、その分の請求は可能です。
とはいえ、あなたがパート収入を失っているのに、義妹が子供の面倒をタダで見てもらうというのは不公平感があります。民法には「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」という不当利得の制度があります。損失を受けたことで利益を得た人がいれば、損失分を返してもらえますが、「法律上の原因」がないことが前提です。
あなたと義妹との間には、幼児の面倒を見る準委任契約があり、法律上の原因があったといえるため、不当利得の返還請求もできません。ですから、報酬も失ったパート代の請求もできません。義妹にパート休業で減収していることを話して交渉してはいかがですか。これからも面倒を見てもらう協力が必要なら、過去分も支払ってもらえるかもしれません。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2024年7月4日号