森口亮「まるわかり市況分析」

TOPIX見直しで「全市場から採用拡大」と「定期的入れ替え実施」へ 採用確率の高い銘柄に早くも注目集まる

TOPIXの見直しによってマーケットはどう変化するか(写真:イメージマート)

TOPIXの見直しによってマーケットはどう変化するか(写真:イメージマート)

 日本取引所グループは、6月19日に東証株価指数(TOPIX)の見直しを発表した。採用する銘柄を全市場に拡大する一方で、その基準を厳しくし、銘柄を絞り込むという方向性が明らかになった。この動きについてどう見るか。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんによる、シリーズ「まるわかり市況分析」。森口さんが解説する。

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 6月19日、日本取引所グループは「TOPIX等の見直しの概要」を発表しました。このニュースは市場関係者の間で大きな話題となり、既にその内容を織り込むような動きが見られます。今回は、この見直しの概要と、それに対するマーケットの期待や不安についてご紹介します。

発表内容の概要

 発表によれば、2022年4月に始まった市場区分の再編に伴い、TOPIXの見直しが進行中です。この見直しは2022年10月から段階的に行われており、2025年1月に完了する予定です。今回発表されたのは、それに続く第2段階のコンサルテーション(意見募集)です。主な変更点は以下の2つです。

・指数の採用対象が全市場区分に拡大されること
・銘柄の定期的な入れ替えの実施

 第1段階の見直しでは、流通株式時価総額が100億円以下の企業のウエイトを段階的に低減してきました。従来のTOPIXは、東証プライム市場(旧東証一部)の全銘柄を対象に、浮動株を反映した時価総額で算出されていましたが、時価総額や流動性の低い銘柄数が多いことが問題視され、市場区分の再編や基準に満たない銘柄の淘汰が進められてきました。

 2025年1月末までに、段階的ウエイト低減が完了し、基準を満たさなかった銘柄はTOPIXから除外されます。2023年10月の資料によれば、ウエイト低減の対象は439社存在し、現在の採用銘柄約1650社から約1200社に減少する見込みです。

 その後、時価総額と流動性の観点から採用にふさわしい銘柄が全市場を対象に選ばれ、1年に一度の定期的な銘柄入れ替えが行われます。初回の定期入れ替えは2026年10月になる予定です。このリリースを受けて、株式市場では、スタンダード市場やグロース市場に上場する時価総額や流動性の高い銘柄の一部で、株価が上昇する初期反応が見られました。

今回の発表内容の注意点

 今回の発表内容に関して、注意すべきポイントを2つ取り上げたいと思います。

【1】コンサルテーション段階であること

 今回の発表は、コンサルテーション(意見募集)の段階です。正式なルールの発表は9月末に予定されています。そのため、現在発表されている内容が最終的にどのように決定されるかをしっかりと確認する必要があります。

【2】初回の定期入れ替えまでの期間

 初回の定期入れ替えは、2年以上先の予定です。このため、今回短期的に上昇した銘柄に対する買いが、長期的に続くとは限りません。常に株価は上下を繰り返しながら、最終的には企業の本質的な価値に収斂していく傾向があります。

 また、株価や流動性が極端に下がった場合、その銘柄が最終的にTOPIXに採用される可能性は低くなります。その場合、買われた分だけ反動により株価が下落するリスクもあります。

期待される3つのポイント

 今回の発表により、期待できる点は以下のものです。

【1】TOPIX採用確率の高い銘柄が把握しやすくなる

 正式なルールにおいても時価総額と流動性が重要視される点はほぼ確実だと思われます。特に、スタンダード市場やグロース市場の銘柄にとって、TOPIXへの採用が決定すると、パッシブファンド(指数に連動するような運用を目指すファンド)からの買い需要が発生し、一時的な株価の上昇が期待できます。

 各市場で時価総額や日々の売買代金がともに上位にランクインしている銘柄は、将来的なTOPIX採用の確率が高いといえ、株価上昇が期待できる場面もあるでしょう。

【2】TOBやMBOの増加可能性

 今回の取り組みだけに限らず、市場のルールが厳格化されることでTOB(株式公開買い付け)やMBO(経営陣による買収)の増加が予想されます。TOBは、第三者が一定のプレミアムをつけて株を公開買い付けすることです。また、MBOは経営陣が自ら株を買い付け、より自由な経営を行うことを目的としています。これにより、市場でのルールに縛られない経営が可能となります。

 これらが発表されると、ともに株価が急騰する傾向が非常に高いです。TOBを行う企業を事前に予測するのは難しいですが、発表する企業が増える可能性は今回さらに高まっています。

【3】グロース250指数の改善期待

 グロース250指数は、東証グロース市場に上場する上位250銘柄で構成されていますが、成長した優秀な上位銘柄が東証プライム市場へ移行する傾向が強いこともあり、パフォーマンスが低迷しています。

 しかし、今回のコンサルテーションによれば、グロース市場に残ってもTOPIXに採用される可能性が出てきました。これにより、グロース市場にとどまる優秀な企業が増え、指数を押し上げる力となるかもしれません。結果として、日本の中小型株全体にもポジティブな影響が波及する可能性はあるでしょう。

 このように今回の発表には、期待できる点は多いものの、実施までには2年以上の期間があります。まずは9月末の正式なルール発表をしっかりと確認し、どのタイミングで株価に影響が現れるかを検証し続けることが重要です。

 投資家としては、市場の評価が正当に反映され、透明で分かりやすいルール変更を期待したいところです。

【プロフィール】
森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。

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