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原価高騰・中国に買い負けで苦しむ回転寿司業界 値上げすると客離れが進む「101円の壁」との戦い

回転寿司業界は魚介類の高騰、「101円の壁」と二重の苦しみに直面(イメージ。Getty Images)

回転寿司業界は魚介類の高騰、「101円の壁」と二重の苦しみに直面(イメージ。Getty Images)

 原材料費や燃料費の高騰が様々な日本企業を苦しめているが、飲食業界で好調を維持してきた回転寿司店も、対応に苦慮しているようだ。原材料高に加え、中国をはじめとするアジア諸国に対しての魚介類の「買い負け」の問題も指摘されている。長く「1皿100円」のイメージが定着してきたことで、思うように値上げが進められないとの特徴も指摘されている。

 魚介類の「買い負け」で仕入れが年々困難になっていると話すのは、ある水産物卸業者だ。

「海外で買い付ける際に、日本の商社が現地の個人バイヤーに競り負けるような状況があります。日本では消費者への小売価格が安いままなので、高値での買い付けはできない。結果として他国のバイヤーは、日本が出せる水準の2~3割は高い値段で持っていく。

 エビなどはまだ養殖なのでモノがあるが、カニやタコは天然に限られてモノがないから高い値段で奪い合いになる。そうなると、経済力があってモノが高くても売れる国に流れていく。とくに中国です。冬になるとカニはもちろん、養殖のフグも中国に流れて、国内は品薄になって値段が高くなる」

原価率の高いネタと低いネタが混在するモデル

 実際、輸入価格は急激に値上がりしている。輸入タコの価格は約10年前の2013年は1キロ601円だったが、今年の1~4月の平均は1453円と2倍以上になっている。魚介類の高騰と品薄の影響は外食産業に大きな影響を与える。なかでも影響が大きいのが回転寿司業界だという。全国紙経済部記者が言う。

「回転寿司の歴史は原価率との戦いでした。通常は原価率15~30%とされる飲食店のなかでも、回転寿司は40~60%と原価率が高いことで知られている。そのため原材料高騰の影響をもろに受ける業界なんです。基本的に魚を使っているメニューは原価率が高く、タマゴなど魚を使わないと低い。

 とくにウニ、マグロ、イクラなどは原価が高いネタとされるし、“生”とつくネタは冷凍ものより原価が高い。赤貝やつぶ貝などの貝類も高いです。エビは種類が多く原価も様々だが、基本的には原価が抑えられて、とくにボイルエビは安いことで知られてきた」

 原価の高いウニ、マグロ、イクラなどの人気商品については、赤字覚悟で提供して客の満足度をアップさせ、その一方で子供が好きなタマゴやエビ、タコ、ツナマヨコーン、カッパ巻きなど原価率の低い商品も提供することで採算ラインを上回るのが従来の回転寿司業界の商売のモデルだった。

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