利益を出すはずのネタの原価率が上昇
ところが、魚介類の高騰や仕入れ時の買い負けによって「回転寿司業界のこれまでの常識が通用しなくなった」と指摘するのは、回転寿司評論家で『回転寿司の経営学』の著書がある米川伸生氏だ。
「海外から輸入する回転寿司のネタについては、サーモンを筆頭にモーリタニア産のタコなども、どんどん原価率が上がっている。マグロは中国にほぼ買い占められている状況だが、備蓄があるのと養殖マグロを入れられるからまだ安定している。マグロ以外にも養殖ができるハマチやブリのようなネタに関しては値段が落ち着いている。つまり、今はマグロより仕入れ値の高いネタがたくさんあるんです。キロあたりでいえばタコのほうが高いくらいです」
本来、原価率が低くて利益をあげられるはずのネタが高騰し、収益を圧迫している構図があるというのだ。とくに大手チェーンは“安さ”を売りにしてきただけに、苦境に立たされているという。米川氏が続ける。
「1皿100円で利益を出すのが基本なので、値上げをせずにネタやシャリを小さくする対応を続けてきたが、それもいよいよ限界に差し掛かっている。養殖魚に頼ろうにも、エサ代の値上がりで養殖魚も原価率が高いネタになっている。日本近海の魚を冷凍にして仕入れる大手チェーンも出始めたが、冷凍技術が発達している港がまだまだ少なく、十分な量を確保できていないのが現実ですね」