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日本企業を標的にする香港系投資ファンド「オアシス」のしたたかさ 「探偵まで使って…」「経営陣の油断を合法的に突いてくる」

「株の支配権を持たれると対抗策を打てない」

 今年、オアシスから株主提案を突きつけられたことが話題となったのは、東証プライム上場の製紙会社・北越コーポレーションだ。同社株の18%を保有するオアシスは6月27日の株主総会に先立って、同社の岸本晢夫・社長の解任などを求める株主提案をすると公表した。

 同社経営幹部が語る。

「岸本が2008年から社長を務めていることや、当社が大王製紙株式を保有していることで標的にされたのだと思います。オアシスは我が社の経営権を握り、様々な手段で株価を上げて早期に売り抜ける計画ではないか。これは我々の中長期的な企業価値及び株主利益の向上に資するものではありません。当社の業績は好調で株主の信頼も厚く、オアシスの提案に対し、経営方針を説明しています」

 そう強気の姿勢だったが、2020年4月に日本で初めてオアシスの株主提案が通り、取締役を解任された元サン電子社長の山口正則氏はオアシスのしたたかさをこう語る。

「彼らは経営陣の油断を合法的に突いてくる。株価が低い会社がオアシスに狙われ、株の支配権を持たれると対抗策を打てない。成功事例を重ねて資金がより潤沢になった彼らを止めるのは至難の業ではないか」

 オアシスが今年3月にサン電子株を買い増したことがわかると、同社株は昨年来最高値を更新。その“買い”の力は市場の注目を集めている。

 オアシスに日本企業の株を買う理由などについて聞いたが、「ご対応しかねる」との回答だった。

 円安を追い風に日本企業に圧力をかけるオアシス。多摩大学特別招聘教授・真壁昭夫氏は言う。

「アクティビストには功罪がありますが、オアシスは買い叩いた企業の資産を貪り食うハゲタカとは違い、経営の合理化やガバナンスの強化などを通じて企業価値を高める提案型のアクティビストです。日本企業に同族経営など旧態依然の経営体質が残り、しがらみがあって思い切った改革ができないことも、彼らが勃興する要因でしょう」

 安くなった株がファンドに買われることが、日本企業が変革するきっかけとなることもあるのか。

※週刊ポスト2024年7月12日号

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