ビジネス

日本企業を標的にする香港系投資ファンド「オアシス」のしたたかさ 「探偵まで使って…」「経営陣の油断を合法的に突いてくる」

香港系投資ファンド「オアシス・マネジメント」の現最高投資責任者セス・フィッシャー氏(時事通信フォト)

香港系投資ファンド「オアシス・マネジメント」の現最高投資責任者セス・フィッシャー氏(時事通信フォト)

 株主総会シーズンを迎えた日本企業が脅威を抱く「物言う株主」。日本企業を買い漁る“ハゲタカファンド”といえば米国のイメージが強かったが、ここ最近はアジア勢が存在感を増しているという。経済アナリストの池田健三郎氏が語る。

「日本市場は規模が大きい割に資本規制が緩いことに加え、空前の円安で株を割安に買えます。そのためアジアのなかでも日本に矛先を向けるアクティビストが多い。特に最近の特徴として注目されるのは、2017年から増加しているアジア系のアクティビストファンドが日本で活発に活動しているということです」

 中でも注目度が高いのが、香港系投資ファンド「オアシス・マネジメント」(以下、オアシス)だ。

「現最高投資責任者のセス・フィッシャー氏が2002年に立ち上げたファンドで、主に創業家が大株主である企業を狙って市場で浮動株を買い増し、突如大株主として登場して株主提案を突き付けます。業績がよく、内部留保が手厚い企業が標的になりやすい」(池田氏)

 オアシスは公式サイトで「日本市場には一貫して注力しており」と記載する。同ファンドの大量保有報告書(2024年6月)によると日本企業の株を5%超保有するケースは7社。それを後押ししているのが「円安」だ。

「急激な円安の進行でドル建ての日本株価格が下落し、効率的に買えるようになった。日本株の“バーゲンセール”で利益を得たい投資家からアクティビストへの資金流入も増加。結果、アクティビストの日本株への投資額は現在約9.5兆円となり、3年で5割増えたとの調査もある」(池田氏)

 オアシスが大きな注目を集めたのは、東証プライム上場企業のエレベーター大手フジテックとの攻防だった。2022年12月に筆頭株主となったオアシスは臨時株主総会を通じてオアシス派の社外取締役を選任し、創業家の内山高一・会長を解任した。かつて内山氏は本誌・週刊ポストの取材にこう明かした。

「彼らは探偵まで使って私や創業家のネガティブな情報を探し、機関投資家や一般の株主が信じてしまった。仲間と思っていた取締役までが180度転換し、満場一致で解任となったことが残念です。オアシスがペーパーで『ガバナンスが向上しなければ留任した取締役に株主代表訴訟を提起する』と持ちかけたことも要因かもしれない」

次のページ:「株の支配権を持たれると対抗策を打てない」

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。