東田氏が続ける。
「もう一つの『競争適性』ですが、中学受験塾のなかには、成績で席順が決まるようなシステムを導入している塾があり、それをゲームのように楽しめるのが、競争適性のある子です。勉強する内容が楽しいかどうかより、競争に勝つことに喜びを感じ、そのために努力できる子と言えます。
早熟タイプで競争適性のある子は、野球やサッカーの試合で負けたときに、その悔しさをバネにさらに頑張るようなタイプで、強いプレッシャーにも耐え、むしろ楽しむように中学受験を乗り切ります。一方で、競争適性のない子は、過剰な競争を強いられる中学受験との相性が悪く、塾への行き渋りが起きたり、アトピーの悪化、眉毛や髪の毛を抜く、チック症が悪化するといった体調面に影響が出ます」(東田氏)
キャパを超える勉強を強いられると自己肯定感の喪失につながる
精神的に幼くて競争適性があまりない子は、受験生としての自覚が生まれにくく、小学6年生という年代は、まだ個人差が大きいという。
「私も保護者の方から、こうした“勉強から逃げる子”の相談を受けることがよくありますが、『今やっている勉強が、本人の成長度合いと照らし合わせて適切なのかどうか。中身が難しすぎないか、量があまりにも多すぎないかを考えてみてください』と答えています。あるいは、『本人には本当はもっとやりたい習い事やスポーツ、活動などがあって、それが著しく制限されていないかを考えてみてください』と。そういうバランスを見てあげることがまず大切です。
私が教えている塾の高校受験のコースには小学生のクラスがあります。中学受験せずに高校受験の準備をするコースですが、そこには中学受験から撤退して、通っている子もいます。保護者の方と面談して、子供の様子を見ていると、中学受験時代、本人の学力状況や成長度合いに比べて過大な勉強をさせられてきたことがよくわかります。キャパを超える勉強を強いられ、結果を出せず、自己肯定感を喪失している子もいます。
そういう子に対しては、競争や偏差値のような数値から少し距離を置いて、適切な量の勉強に切り替えてあげると、表情が明るくなります。保護者の方が『この子、本当に宿題やらないんですよ』と言っていたような子でも、宿題をやってくるようになるのです。だから、すぐに勉強をサボる、逃げの姿勢が見られるというのなら、今の勉強が本人の成長度合い、キャパシティに合っているのかをまず疑った方がいいと思います」(東田氏)