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岸田政権が国民年金「保険料納付5年延長」を見送り それでも消えない「年金70歳支給開始」への策動

「高齢者の定義=70歳以上」となれば、年金の給付が減り、負担が増える可能性がある

「高齢者の定義=70歳以上」となれば、年金の給付が減り、負担が増える可能性がある

65歳以降も働く社会へ

 年金博士として知られる、社会保険労務士の北村庄吾氏(ブレイン社会保険労務士法人代表)は「政府が最終的に目指しているのは、現行の60歳定年・65歳年金支給開始から5歳延ばした65歳定年・70歳年金支給開始を準備していると考えられます」と話した。

「来年に控える5年に一度の年金改正では、一定以上の給与がある高齢者の厚生年金(報酬比例部分)を減額する『在職老齢年金』の廃止を含めた見直しを検討している。働くと年金が減るのでは、“働くと損”という考え方になる。この制度があると、年金が減らない範囲で働くという考え方になってしまい、働く意欲がわかない。保険料に見合った給付を得るという原則にも反する。そうしたこともあり、見直しが議論されてきた。

 ただ、背景に少子高齢化による労働力人口の急減という問題があるのはたしかです。高齢者にどんどん働いてもらわないといけない。65歳まではもちろんのこと、65歳以降も働いたほうが得だという制度変更を進めていくと考えられます。すでに、前回の年金改正で65歳以降も働くと1年ごとに厚生年金が上乗せされる在職定時改定が導入されています。

 そうして65歳以降も働いたほうがいいという流れを政府が作っているのは、企業が65歳定年を前提とし、働ける人は70歳まで働こうとするような社会にしていきたいという意図でしょう。そして、これまで定年から5年遅れで年金支給が始まるというのがパターンだったので、65歳定年になれば年金支給開始は70歳になる。そうなれば70歳まで定年後再雇用があるかたちとなるでしょう。つまりは、『高齢者の定義を5歳延ばす』という提言と合致するわけです」

段階的な支給開始年齢引き上げシナリオ

 北村氏は、70歳支給開始への準備は着々と進んでいるという見方だ。そして次のように続けた。

「いきなり年金支給開始を70歳まで引き上げることはないでしょう。67歳や68歳に引き上げたうえで、段階的に70歳にしていくというシナリオになるでしょうね。65歳で定年になった時に70歳まで働ける人はいいが、健康状態の個人差もあるし、いい仕事を見つけられるかも人によります。とはいえ、現時点でも働けるうちは働くという意識の人が多くなっており、そういう意味では政府の狙いはうまくいっているということでしょうね」

 年金改悪の動きがあるなかで、一人ひとりが自衛策を考えなくてはならない。

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