創業125周年のサントリーホールディングス(HD)が大きな節目を迎えようとしている。業界トップの売上高を誇る同社の“長年の課題”と言われるのが「ビール事業」。その陣頭指揮を執るのが、“次期社長”と目される創業家出身の鳥井信宏副社長だ。
長年、アサヒ、キリンの後塵を拝するなか、今夏は新たな主力商品「サントリー生ビール」の新CMを全国でオンエアするなど攻勢をかける。これは「社長交代への布石だ」と経済ジャーナリスト・河野圭祐氏が言う。
「サントリーHDの次期社長は、鳥井副社長が既定路線。創業家への“繋ぎ役”として10年にわたって社長を務めた新浪剛史氏(元ローソン社長)の経済同友会代表幹事の任期が終われば、鳥井氏就任でしょう。ビール事業は同じく創業家の佐治信忠会長の肝いり。最後の試験という意味合いではないか。実はそれに加えて、同社は“次の次の社長まで見えてきた”と言われている」
どういうことか──。サントリーの国内地方拠点で営業職を務める40代の男性社員が話す。
「昨年12月、役員人事の発表で『佐治清三』という名前があった。それを見て初めて、佐治家の人が社員にいたと知りました。拠点の他の社員も皆同じで、“こんな人がいたんだね”と噂になった」
“次の次の社長”と目されるのは、1月付で同社執行役員に就任した佐治清三氏。「佐治」姓からわかるように、創業家の一員で、鳥井副社長のはとこにあたる。現在43歳だが、創業家における位置づけはやや複雑だ。
清三氏の母は佐治信忠会長の腹違いの妹。父は世界的チェリストの堤剛氏。清三氏はもともと堤姓だったが、2015年に祖父にあたる故・佐治敬三氏の妻(清三氏の祖母)の養子となり、佐治姓に変わった。信忠会長の「甥」である清三氏は、養子縁組で「弟」になったわけだ。
家系図の通り、これまで同社社長は創業家の鳥井・佐治両家が“たすき掛け”で担ってきた。
今回、役員となった佐治清三氏は、実子のいない信忠会長の後を継ぐ“佐治家の跡取り”となり、将来の経営トップ候補となるか──節目の年での役員就任は同社にとって大きな動きだ。