「創業家」による同族経営は外資ファンドによる買収リスクにつながるとの指摘もあるが、近年、グローバル展開する大企業で「創業家回帰」の動きも見られる。セブン&アイHDでも「創業家への大政奉還が近い」との見方がある。
1920年に東京・浅草で開店した「羊華堂洋品店」をルーツとし、戦後、伊藤雅俊氏がイトーヨーカ堂を設立。総合スーパーとして事業を拡大させた。同社でセブン-イレブン・ジャパンを立ち上げた鈴木敏文氏(91)が1992年に社長となると、イトーヨーカ堂グループはコンビニ事業を軸に成長。2005年には持株会社セブン&アイHDが設立され、鈴木氏が経営トップに就任。創業者の雅俊氏は名誉会長に退いた。
しかし2016年、鈴木氏は突然引退を発表する。全国紙経済部記者が言う。
「2015年に鈴木氏が次男の康弘氏(59)をHDの取締役に据える人事を行なうと、“世襲を狙っている”との見方が浮上。さらに鈴木氏は2016年に当時セブン-イレブン・ジャパン社長だった井阪隆一氏(66)の退任を提案したが、大株主である雅俊氏に反対された。そうして社内の混乱を招いたことで、同年5月に鈴木氏は康弘氏とともに退任。その後、HD社長に就任した井阪氏は創業家回帰を進めるとみられている」
イトーヨーカ堂を立ち上げた雅俊氏は2023年に亡くなったが、注目の人物はその次男・順朗氏だ。