冷やし中華がおいしい季節になった。家庭で作る冷やし中華といえば、定番の具はハム・錦糸卵・キュウリといったところだろう。そこにトマトやワカメ、エビなどが入ることもある。しかし、冷やし中華が大好きなネットニュース編集者・中川淳一郎氏は「冷やし中華ほど自分が好きな具を乗せて楽しい麺類はないので、自分好みのオリジナルの冷やし中華を作ればいい」と考えている。中川氏が個人的にたどり着いた「私なりの究極の冷やし中華」を紹介する。
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冷やし中華といえば漫画『美味しんぼ』が取り上げた回が印象的です。主人公・山岡士郎がライバル・海原雄山から「あんな下等な物、食べて見なければクズかそうでないかわからぬと言うのなら、食べ物について云々する資格はないわっ!」と一喝される。
山岡も元々は冷やし中華否定派だったのですが、雄山の態度を受け、「中華料理の権威によりかかって新しい食べ物について理解しようともせずに否定してしまうのは、想像力は衰え、感性も鈍った証拠だ! 権威主義の固まりだ!!」と突然擁護派に転向し、雄山に食べさせることを約束する。
山岡は厳選した食材でスープと具を作り、麺打ち達人に麺を打ってもらい、雄山もその味にはそれなりに評価します。具は焼き豚、キュウリ、錦糸卵。しかし、雄山はコレを物足りないと感じ、自ら作ることに。具は同じなのに、そこにいた人々は雄山の冷やし中華の方がおいしいという。
雄山は醤油を含めた調味料はやはり中国のものを使うべきだと言い、それが日本の調味料を使った山岡との違いだと述べる。山岡はそこまで配慮が行かなかったことを苦悶するも、雄山は冷やし中華の可能性について認識をあらため、店を後にします。そして、後日、テレビでこう述べる。
「冷やし中華を中華料理じゃないと言って馬鹿にする人がいるが、中華料理はいつでも新しい料理を開拓して、料理の中に加えて来た。冷やし中華も、作り方によっては、立派な中華料理になるんです」
いわば、冷やし中華に中華料理としての可能性を見出したという話です。とはいえ、私からすると別に「中華料理」の枠に捉える必要はないのかな、とも思うんですよ。あくまで「中華風冷やし麺」だと認識しています。