アパレル勤務のMさん(30代/女性)も、物価高騰の波に思い切り翻弄されている。
「昔からファッション好きで、他の業界から好きなブランドのショップに転職しましたが、正直うまくいってません。店に立つ際にそのブランドの服を着る必要があり、シーズンごとに2~3着、自発的に購入しなくてはいけないんです。店はインバウンドで連日大盛況で、給料はちゃんと上がっているんですが、服の値段は“諸般の事情で”とかいう理由でさらに上がっていて、手取りは減っています」
コロナ禍を経て手取りが減ったというのはKさん(50代/男性)だ。
「これまで会社から通勤手当が支給されていましたが、コロナ禍でリモートワークが増えたため、社全体で通勤手当の見直しを実施。その結果、通勤手当に上限が設定され、給料が少し上がってもトータルで手取りは減りました。私がいるセクションはリモートが不可能で、月~金でフル出勤しており、完全に丸損です」
ロンドン駐在は物価高と為替安のWパンチ
最後に、“目減り率”が一番高いと思われるのが、現在ロンドン勤務中のAさん(40代/男性)だ。
「私の給与は同世代の平均より高く、海外手当もついていますが、恐ろしいペースで円安が進み、生活はどんどん苦しくなっています。給与は日本の口座に日本円で振り込まれるため、この1年だけでも実質的に1~2割は目減りしているはず。為替レートの変動も多少は手当に反映されますが、100%カバーすると日本の同じ役職の社員と給与差がつきすぎるという問題があり、泣き寝入り状態です。
現地は物価の高さも想像以上です。まず、家賃がとんでもなく高く、一人暮らし用の物件でも月20万円近くするのはザラ。私は中心部から少し離れた地区の“元・公務員寮”というアパートに住んでいますが、3人家族で家賃は30万円を超えます。外食はざっくり言って日本の2倍というイメージでしょうか。ランチでも一人あたり軽く2000円はかかるので、もっぱら自炊。食事の楽しみは、駐在員仲間とのホームパーティぐらいですね」
日本ではドル円相場ばかり話題になるが、イギリスのポンドに対する円ルートも2年で3割ほど下落。海外勤務を命じられるエリートサラリーマンといえども、苦労は尽きないようだ。(了)