そういう親は、なぜ子供を「私立」に入れたがるのか。谷口さんは、「安心感」だと話す。
「人気の志望校は、大学付属校ですね。中学に入れてしまえば大学までエスカレーター。そういう親がそろって言うのは、『子供になるべく受験の負担をさせたくない』です。親のハンドリングが効く中学までのうちに道筋をつけてやりたいというわけですが、実のところ親が早く安心したい面もあるのでしょう」
しかし、その安心感が裏切られた時、「カスハラ」につながってしまうケースがあるという。谷口さんは、「塾に通わせたのに受からなかったという文句や、講師に対する罵倒は、何度もいただきました」と苦笑いを浮かべる。
「成績が上がらないのは塾の教え方に問題」
言うまでもなく学習塾は勉強をする場所である。ただし同じ塾に通い、同じ学校を受験しても受かる子と受からない子がいるように、当然その学力は子供によって差異がある。谷口さんは、「その差異を認めたくない親からの、勉強に関するクレームは珍しくない」という。多いのは「成績が上がらない」「志望校に落ちた」というものだ。
谷口さんの塾で小学生を教えるベテラン講師・横内さん(仮名、40代女性)が、実際に受けたクレームを振り返る。
「最近も、入塾して3か月ほど経った子の親から、『テストの点が上がっていない』というクレームを受けました。いくら塾とはいえ、授業を聞いているだけで成績は上がりません。宿題や復習をやって身につけることこそが大事ですが、それをさせず、塾に通ったらみるみる成績が上がると思っている親は案外いて、『教え方やカリキュラムに問題があるのではないか。講師が手を抜いているのではないか』『テキストが悪いのでは』といったお怒りはしばしば受けます」(横内さん)