近年首都圏を中心に中学受験をする世帯が増えている。首都圏模試センターの調べによると、2015年から受験者は増加傾向、過去最高は2023年の5万2600人で、2024年も5万2400名と過去2番目をマークした。これはおよそ小学6年生の4.7人に1人が中学受験をしている計算になるという。
中学受験を見込んで、早いうちから子供を塾に通わせる家庭も珍しくない。しかし過熱する受験戦争の裏で、「カスハラ」に悩む塾や講師も少なくない。
話をしてくれたのは、神奈川県で小学生~高校生を対象にした学習塾を複数展開している塾長・谷口さん(仮名、50代男性)。塾のある場所はすべて新興住宅地が開発されたことで栄えた私鉄沿線で、世帯年収が高く、中学受験をする家庭も多い。
「うちはバリバリに高偏差値狙いではなく、真ん中から少し上ぐらいの学校を狙う子が通うレベルの塾。少人数授業で親と教師の距離感も近く、アットホームなのが売りです。中学受験にあたっては、大手進学塾が販売するテキストをベースに、その子の志望校に合わせて指導していきます。ケース・バイ・ケースで個別指導も行ないます」(谷口さん。以下「」内同)
塾経営30年、親子に向き合ってきた谷口さんは、「どこに行きたいという明確な志望校があるわけではなく、『とにかく私立に入れたい』という親が増えた」という。
「うちの塾は親自身が中学受験経験者というよりも、むしろ親は中学受験をしておらず、公立高から私立大学卒で銀行マン、上場企業勤務といった家の子が多いです。新興住宅地に戸建てを買うぐらいだから、そこそこ年収はあり、学歴に対する意識も高い。
ただ、じゃあどこを目指すのかと親に聞いても、『どこでもいい』という答えが多くなりました。一昔前は、東京の私立といえば“頭が良い子が行くところ”あるいは“お坊ちゃん・お嬢ちゃんが行くところ”というイメージでしたが、今やその限りではまったくない」