そうした個性的な経営トップの存在が京都企業の強みだと、経営戦略に詳しい高橋義仁・専修大学商学部教授はみている。
「京セラはセラミックが祖業ですが成長のために次々と事業領域を広げたし、ニデックもモータをコア事業にしながら積極的な買収で幅広い事業を展開する。成長を求め、海外に顧客を開拓する創業者や創業精神を受け継ぐ経営者がいるのが京都企業の強み。数年単位で交代して既存の枠内から飛び出せない“日本企業的サラリーマン社長”との違いが際立ちます」
創業精神を失わない経営トップが長く舵取りを担うことが重要だと、前出・堀場氏も言う。
「新しい技術開発や海外での現地化を進めるなら、最低でも10年は見ないといけない。社長の任期が6年くらいでは先行投資だけで結果も出ないし、グローバルでは勝てないでしょう。京都企業が本社を移すことなく海外展開に成功しているのは、トップが長期的視野で見ているからだと思います」
そこには、人口減が進むなかで日本企業がどう成長を目指すかという問題へのヒントもありそうだ。堀場氏が言う。
「京都は四方を山に囲まれて土地が限られ、大量生産の大工場をつくることは難しい。人口比率でも全国のたった2%の市場規模に過ぎない。この“箱庭”のような環境だからこそ、各企業は小さくても独自で付加価値の高い製品を生み出し、世界に売り出す必要に迫られた。
世界から見れば、島国の日本も“箱庭”のような環境です。そう考えると、京都式経営には日本企業復活のヒントがいくつもあるのではないか」
※週刊ポスト2024年8月2日号