ライフ

【正当防衛は認められない】カラスの襲撃に傘で応戦したら「鳥獣保護法」違反になる? 処罰されるか否かの境界線を弁護士が解説

 もっとも、本来は罪に問われるべき違法性があるのに、処罰されない場合があります。例えば、正当防衛もそのひとつですが、カラスに対しては認められません。

 なぜなら、正当防衛とは「急迫不正の侵害」に対して身を守るために、やむを得ない行為を処罰しないというもの。ところが、カラスの襲撃は急迫ではありますが、カラスに法の適用はないので「不正の侵害」といえないからです。

 ただ、緊急避難の考え方があります。刑法37条では「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない」と規定しています。

 カラスの襲撃を突然受ければ、現在の危難です。身を隠すゆとりもなく、突かれケガをするかもしれないので、鞄や傘で追い払ったり、攻撃を防ぐ行動は、やむを得ない行為となります。その結果、カラスにケガをさせても、人のケガに比べると、程度を超えたことにはならないと思われるため、違法性はなく、処罰されません。ただし、不必要なまでの過激な攻撃を加えた場合には、過剰避難として処罰される可能性があります。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2024年8月2日号

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。