森口亮「まるわかり市況分析」

【為替介入における財務省の論理と思考】米CPI発表と同時に為替介入を行ったのはなぜか?日米金利差が縮小するタイミングで狙った最大の効果

意外だったCPIの発表とほぼ同時刻の介入

 1ドル160円を超えてからも財務省の神田真人財務官による口先介入は続いていましたが、その効果は限定的でした。

 市場で意識されていたのは「神田ライン」と呼ばれる介入実施の基準です。神田財務官は以前の発言で、「2週間で4%以上の変動」は明らかに投機的であり、対処を行うと述べていました。実際に4月の介入は、2週間で4%以上変動したタイミングで実施されました。

 このため、市場関係者は財務省において「2週間で4%以上の急変動」といった明確な基準があることを強く意識していたと考えられます。さらに意外だったのは、米国の主要な経済指標の発表時刻とほぼ同時刻に介入が行われた可能性が高い点です。

 この時に発表された米CPI(消費者物価指数)は、FOMC(連邦公開市場委員会)の金融政策に最も大きな影響を持つ経済指標です。その結果が前月比▲0.1%とインフレ鈍化を示したことで、早期利下げ期待から米長期金利が大きく低下し、日米金利差が縮小しました。このタイミングにドル売り介入を行うことで、投機的な動きを抑制し、値動きを大きくした可能性があるのではないでしょうか。

まだカードは残されている

 CPIの発表翌日である7月12日にも、介入観測が出ていました。これは米国の主要な経済指標PPI(卸売物価指数)の発表後でした。国際通貨基金(IMF)がかつて示した為替介入のルールによれば、変動相場制の国における介入は「半年で3回」「1回あたりの介入は3営業日以内」となっています。

 介入の効果を最大化し、継続的な効果を狙うために、意外性のあるタイミングで介入を実施した可能性があります。今後の為替レートには再び注目が集まります。

 ちなみに今年の為替介入は、1回目が4月29日、2回目は7月11日に実施されていると捉えられています。IMFの現行ルールのままであれば、まだ介入のカードを残していることになります。

 初回の4月末から半年の10月末付近が3回目の期限となりますが、その間に米国は利下げ、日本は利上げを行うという市場の予想が高まっています。

 そのため、今よりもさらに円高方向への圧力が強まる可能性が高いです。それでも円安ドル高に向かうようであれば、再び為替介入の可能性も残されています。

 為替レートは企業の業績だけでなく、株式市場にも私たちの生活にも直結する重要な指標の一つです。現状を理解し、運用や生活のリスク管理を徹底していきましょう。

【プロフィール】
森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。

森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている

森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている

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