ファミレス、牛丼、立ち食いそば……。全国にはあらゆるジャンルの飲食チェーンがひしめいている。牛丼なら○○、回転寿司なら○○など、それぞれ「お気に入り」もあるだろう。ファストフードのなかで異彩を放つチェーンといえば、伝統の味「オリジナルチキン」で勝負する「ケンタッキーフライドチキン」だ。唯一無二の看板商品には根強いファンが多いが、今後、その味が変わってしまうのではとの懸念が生じている。運営会社の日本KFCホールディングスが米投資会社に買収されたことで将来予想される変化について、フリーライターの池田道大氏がリポートする。
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秘伝のスパイスが香るケンタッキーの「オリジナルチキン」。ひと口かぶりついた時の食感や味が脳裏をよぎって無性に食べたくなり、「今日、ケンタッキーにしよう」と心を躍らせる人も多いはず。だが最近、熱心なKFCファンが不安に感じていることがある。愛するケンタッキーフライドチキンの「味」が変わってしまうかもしれないのだ。
日本経済新聞は今年2月末、親会社・三菱商事が「ケンタッキーフライドチキン」運営会社・日本KFCホールディングス(以下、日本KFC)の全保有株式を「売却する方針」と報道。5月には米投資ファンドのカーライル・グループが日本KFCの買収を発表した。7月9日、カーライル傘下による日本KFCの株式公開買付け(TOB)が成立。カーライルの100%子会社となる日本KFCは、9月中に上場廃止となる見通しだという。
日本KFCを取材して30年以上になる日本経済新聞社編集委員の田中陽さんが買収の内実を明かす。
「日本KFCは(米国ヤム・ブランズ傘下の)KFCアジアとの間で、フランチャイズの許諾と商標使用許諾の契約を2024年11月まで結んでいます。関係者によると、KFCアジアは更新交渉の場で、それらの契約料を従来の3倍にするとの条件を出してきたとのこと。日本KFCの大株主である三菱商事は業績絶好調の中、高額な契約料と今後の成長率などを天秤にかけて日本KFCの全株式を手放すことを決め、売却先としてカーライルを選びました」(田中さん・以下「」内同)
三菱商事の撤退で創業以来の「味」が心配される理由
日本KFCは1970年に三菱商事と米KFC(現・米ヤム・ブランズ)が共同出資して設立し、2007年に三菱商事の子会社となった。創業以来のパートナーが経営から手を引き、米投資ファンドの傘下に入ることで心配されるのが、日本KFCに受け継がれてきた「味」に他ならない。
日本KFCの「オリジナチキン」の味を生み出すのは、創業者のカーネル・サンダース氏が編み出した“魔法のレシピ”だ。それに加え、日本KFCは全国に約170か所ある登録飼育農場で専用のブロイラーを飼育。独自に開発した飼料で育てた生後36日前後飼育の中雛を、店舗に毎日配送している。店舗では、独自の認定資格を取得した「チキンスペシャリスト」が11種類からなる秘伝のハーブ&スパイスを用いて一つずつ手づくりで調理し、専用の圧力釜を使うことでふっくらジューシーに仕上げている。