乗客だけでなく税収も落ち込むのが人口減少社会
地域公共交通の全体像を描くには、人口が減っていく中で「地域」として残せるのかという点がまずもって問われる。
一方、「赤字ならば廃止するという日本の考え方は世界の非常識だ。道路のように公共インフラとして位置づけるべきである」という意見もある。だが、人口減少社会では乗客だけでなく税収も落ち込む。採算を度外視し、税金を投入し続けて、公共インフラにふさわしい運行本数を維持するというのは現実的ではない。
人手不足でどの鉄道会社も運転手や保線作業員の確保が難しくなっていく。限られた人的リソースを有効に活用することができなくなれば、本来ならば存廃の検討対象とならないはずの区間まで列車を走らせられなくなる可能性が出てくる。
人口減少社会は部分最適でなく全体最適で捉える必要があるのだ。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、最新の統計データに独自の分析を加えた未来図を示し、これからの日本が人口減少を逆手に取って「縮んで勝つ」ための方策を提言している。