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「メタスピード」第三世代でパリ五輪マラソンに挑むアシックス ナイキ厚底シューズとは対照的な仕様に

「METASPEED SKY PARIS」(写真提供/アシックス)

「METASPEED EDGE PARIS」(写真提供/アシックス)

「メタスピード」の第三世代となる「スカイパリ」「エッジパリ」

 そして2020年秋のロンドンマラソン。開発中のシューズのプロトタイプを履いて出場した米国のサラ・ホールが2位に入り、「やっと戦えるシューズができつつある手応えを掴んだ」(同前)という。アシックスが足元を支えたホールは、2か月後にも37歳にして自己ベストを大幅に更新。箱根駅伝でシェア「ゼロ」になったのはその直後のことだが、反撃の準備は整いつつあったのだ。

 2021年3月、アシックスは「メタスピードスカイ」(ストライド走法)と「メタスピードエッジ」(ピッチ走法)という2種類の新商品を発表した。

(以下、「ナイキの厚底シューズ」との違いを解説)


 スポーツライターの酒井政人氏が語る。

「最大の特徴は、ランナーの走り方に合わせた仕様にしたことです。ナイキの厚底シューズが“選手が靴に合わせた走り方をする”ことを求めたのとは対照的でした。

 開発にあたっては、とにかくデータを集めた。2021年にはアフリカのトップ選手が集結する『CHOJO CAMP』をケニアで立ち上げた。次世代のトップ選手を育成・強化する施設で多くのデータを集めながら開発を進めたことが、結果に結びついていきます」

 国内では2021年2月のびわ湖毎日マラソンで、アシックスのシューズを選んだ川内優輝が8年ぶりに自己ベストを更新。

 2021年夏の東京五輪のトライアスロンでは男女とも10km走時に「メタスピード」を採用した選手が金メダルに輝き、2022年の世界陸上では米国選手6人のうち3人が「メタスピード」の第二世代を採用。うち2人がシーズンベストと自己ベストを出して入賞した。日本人選手では、今年1月の大阪国際女子マラソンで、メタスピードシリーズを履いた前田穂南が2時間18分59秒で日本記録を19年ぶりに更新した。

 時を同じくしてアシックスは売り上げを伸ばし、2023年12月期は連結売上高、営業利益、純利益とも過去最高を記録。同社はランニングシューズで2025年までに日米欧のシェアトップという目標を掲げる。ナイキとの形勢逆転が目指せるところまできたのだ。

 そして今年春、満を持して「メタスピード」の第三世代となる、ストライド走法に適した「スカイパリ」、ピッチ走法に適した「エッジパリ」を発表した。

 北米や欧州の選手にも支持は広がり、パリ五輪では、東京五輪と2022年世界陸上の男子マラソンで銅メダルを獲得したバシル・アブディ(ベルギー代表)らがアシックスと契約してメダルに挑む。集大成の舞台にも見えるが、同社の挑戦は続く。

「Cプロジェクトが始まってからアスリートとの距離が近くなり、大会で走る姿を家族の一員として見てしまいます。大きな大会でアシックスのアスリートが表彰台に立つなどの好成績を収められるよう、シューズの開発を進めていくだけです」(前出・プロジェクト担当者)

 アシックスは、表彰台の「C(頂上)」に立つことができるのか。

※週刊ポスト2024年8月9日号

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