【5】「インプラント専門医」は存在しない?
すでにインプラント手術を受けた人は、専門医や認定医という肩書きを参考にしたかもしれない。しかし、それは国内に乱立する学会や団体が独自に定めたもので、厚労省が公認した“インプラント専門医”は現時点で存在しないのだ。
実は、歯科大学関係者が主体となり組織された日本顎顔面インプラント学会と開業医中心の日本口腔インプラント学会の意見調整が、7年経ってもつかないのだ。前者の理事長・嶋田淳氏が取材に実情を明かした。
「専門医のスキルを保証するため、歯科大の常勤医になって、インプラント治療の臨床研修を受けることを条件にする案を厚労省と決定しました。これに対して、開業医が多い口腔インプラント学会側は応じられないと。この学会では独自の専門医制度があり、受講するセミナーなどがビジネスになっていることもあり、抵抗があるのでしょう」
本当の“インプラント専門医”の誕生は、まだ先になりそうだ。
【プロフィール】
岩澤倫彦(いわさわ・みちひこ)/1966年、札幌市生まれ。ジャーナリスト。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。著書に『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)などがある。最新著書は『がん「エセ医療」の罠』(文春新書)。
※週刊ポスト2024年8月9日号