「おい、カツ丼でも食うか?」──昔の映画やドラマでは、刑事が取調室で被疑者に供述を促す際にカツ丼を頼むシーンがあった。それはフィクションの世界の話と思いきや、本当にあった話で、そのカツ丼が今も食べられるという事実がネットをざわつかせた。
7月10日、X上で、「元立川警察取調室御用達」という説明付きのメニュー写真とともに「取調室のカツ丼は実在した」という投稿がなされると、〈悪事を働かなくても取調室のカツ丼を食べられるの?〉〈食べてみたい〉などと興味をそそられる人が続出。300 万ビューを超える注目のトピックとなった。
そこで紹介された店が、「高尾亭」(東京都立川市)だ。かつて取調室にも出前されていたというカツ丼はどのようなものか。実際に店を訪ねてみた。
老舗蕎麦屋は喫茶店から始まった
JR立川駅南口から徒歩15分程の場所にあるそば処「高尾亭」は1928年創業の老舗で、蕎麦屋ではなく喫茶店としてスタートしたという。現在、同店の運営に携わる株式会社TKfarmsの広報担当者が、その歴史を語ってくれた。
「喫茶店をこの場所で始めて、当初はコーヒーやトーストを提供していたのですが、数年後にお客様の要望で中華そばもつくることになったそうです。コーヒーと中華そばという異色の組み合わせだったので、喫茶店なのか定食屋なのか、よくわからない店だったと思います」
当時はまだ喫茶店も珍しかった時代。初代店主の高橋五郎さんはかなりの商売上手だったようで、とにかく店を出せば人は集まるに違いないという発想のもと、メニューについても柔軟に考えていたという。