西山さんの会社に所属する運転手のうち、20代はほとんどおらず、最年長は70歳を超えている。定年は60歳だが、定年を杉ても会社から「人がいないからまだ続けて欲しい」と懇願され、雇用形態を変えてバスの運転手を続ける人もいる。しかし、西山さんは「最近は高齢者が起こす事故も少なくない。個人的には心配な部分も多い」と漏らす。
「うちの会社では全員といっていいほどの運転手が、土日の休みを取れていないと思います。土日はバスの利用客も多く、総出で対応しないと間に合わない。誰かが怪我や急病になったら、正直もう“詰む”状態です。持続可能な働き方が叫ばれますが、一人当たりにかかる負担は増える一方です」
新紙幣導入もバス会社の負担に
7月に登場した新紙幣もバス会社の負担につながっている。
「地方でバスに乗るのは高齢者や学生で、現金派も多い。交通系ICでの決済が普及しているとは言えません。両替機を更新するのは高い出費になるため、資金的に余裕のない会社の現状だと、導入は当分先のことでしょう」
では、現実問題として新紙幣にどう対応しているのか。
「運転手がその場で両替します。ただ、先日1日のうちに5回も新千円札しかないというお客さんが続いたときは、最後の人に両替するお金がなくなり、やむを得ず後日お金を払っていただく形にさせていただきました」
西山さんは、「辞めさせてもらえない仕事で、心をすり減らす運転手は多いと思います」とため息をつく。現場の負担増はますます加速しているのが現状のようだ。(了)