「物流崩壊」は想定より早く到来するかもしれない
実際に、2023年時点で運送会社の倒産が急増している。東京商工リサーチによれば2023年の道路貨物運送業の倒産は2014年以降最多となる328件(前年比32.2%増)にのぼったのだ。このうち、運転手などの人手不足関連の倒産が41件で前年比127.7%と大幅に増えた。
2023年の倒産件数が急増した主な要因は、運転手不足による機会損失に、人件費や燃料費の高騰が重なったことであるが、「物流2024年問題」を契機に業界の本格的な縮小が始まったということに他ならない。しかも、トラック運送業界の新陳代謝は著しく、倒産するところがある一方で新規参入も多いのだが、近年は新規参入事業者数の伸びが鈍化し、横ばい状態となっている。物流崩壊は多くの人が想定するより早く到来するかもしれない。
全日本トラック協会によればトラック運送事業者の9割が中小企業である。社会的要因でコストが膨らんだとしても、大口の荷主との価格転嫁交渉はしづらい。帝国データバンクが2024年2月に行った実態調査では、運輸・倉庫業は27.8%と価格転嫁率が低い。コスト上昇分のおよそ4分の3弱を運送会社側が負担しているということだ。
トラック運転手不足はいまに始まったことではない。年間所得額は全産業平均と比較して4~12%低く、労働時間が長い。若い世代や女性に不人気で、40歳未満は就業者数全体の24.9%(2023年時点)だ。50歳以上が49.8%を占めるいびつな年齢構成となっている。