河合雅司「人口減少ニッポンの活路」

外国人運転手は「物流2024年問題」解決の切り札になり得ない 敬遠される日本特有の交通事情

大型トラック運転手の労働は平均より月37時間長い

大型トラック運転手の労働は平均より月37時間長い

協業できる運送システムを構築できるか

 M&Aで巨大な運送会社を設立するのも1つの方法だが、ハードルが高そうである。中小の運送会社が加盟する組合組織を立ち上げるほうが現実的だ。協業できる組合組織がデジタル技術を活用して運送システムを構築するのである。

 組合は共同の配送センターを設け、どこに荷物を運び得るトラックがあるのか情報を一元的に集約する。センターは空で走る無駄が生じないよう効率的に各トラックに仕事を割り振っていくのだ。

 組合は実質的に1つの会社を創設するイメージである。こうすれば中小の運送会社は下請け的な立場から脱し、少なくなる運転手の待遇を改善しながら、個々の業務量も減らすことが可能となる。

 トラック企業の協業が進めば、政府の「物流革新緊急パッケージ」にあった「モーダルシフト」(トラックなどによる貨物輸送を鉄道や貨物船に代替する物流の効率化策)も機能しやすくなる。

 JR東日本は「貨物新幹線」の実用化に向けて、実証実験を行った。こうした新しい動きも、各駅で待ち受けるトラック輸送がしっかりしていてこそ効果を増す。

 社会基盤中の基盤である物流が破綻したならば、日本そのものが崩壊する。社会が一丸となって物流崩壊を何とか食い止めなければならない。

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。

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