日本郵便の赤字拡大が止まらない。7月に発表された2023年度の郵便事業の収支(営業損益)は896億円の赤字で、郵政民営化以降で初めて赤字となった昨年度(211億円の赤字)を大きく上回る損失だった。こうした中で、30年ぶりとも言われる郵便料金の値上げを10月に実施する予定だが、その効果は限定的との見方も根強い。なぜこのような事態になっているのか?
人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
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日本崩壊の萌芽は暮らしに身近な公共サービスにも広がっている。郵便事業の苦境もその1つである。
「郵便離れ」が進む中、封書やはがき代が2024年10月から3割を超す値上げとなる。物価問題に関する関係閣僚会議が、25グラム以下の定形封書の郵便料金の上限を現行の84円から110円に引き上げる改定案を了承した。郵便の値上げは消費税増税時を除き1994年以来約30年ぶりである。
日本郵政は、はがきについても63円から85円へ値上げし、レターパックや速達などの料金も引き上げる。
政府が値上げを容認したのは、日本郵政の2022年度の郵便事業の営業損益が211億円の赤字となったためだ。この数年、黒字幅が縮小していたが、赤字となったのは2007年の民営化後、初めてである。2023年度も896億円の赤字となった。