値上げしても赤字拡大で「焼け石に水」
郵便事業が赤字となった最大の理由は手紙の需要の激減だ。インターネットやSNSの普及で各種請求書のウェブ化が進んだり、各企業が販売促進のためのダイレクトメールの通信費を削減したりしたためだ。ピーク時の2001年度には262億通あった内国郵便物数は、2022年度には45.0%減の144億通にまで落ち込んだ。年賀状の減少も著しい。通信サービスの多様化に、人口減少に伴う利用者減が拍車をかけた形だ。
一方、コスト削減しにくい経営環境に置かれていることも要因である。郵便物の集配を全国展開するには多くの人手を要するため、2023年度の営業費用のうち人件費が63.0%、集配運送委託費が11.4%である。郵便局の窓口営業費の約75%も人件費で構成されており、これらを含めたトータルの人件費は費用全体の約4分の3を占める。
日本郵便は区分作業の機械化や普通郵便の土曜日配達の休止など業務の効率化や簡素化を進めてきたが、収支の改善は難しい。組織のスリム化に限界がある中で、社会の賃上げ機運は高まっており、2025年度以降の人件費はさらに膨らみそうだ。