相続手続きには多くの落とし穴が待ち受ける。トラブルを回避するためにはどう進めるのが正解か。最初に済ませておきたいのが、被相続人の財産をまとめた「財産目録」の作成だ。相続専門税理士の相原仲一郎氏が語る。
「不動産から預貯金や有価証券まで所有財産をすべて洗い出す。これをやっておかないと、遺産の分配が進みません」
相続の第一歩であるこの財産目録作成だが、落とし穴が潜む。3年前に腎臓がんを発症した父親の財産整理を手伝ったという60代男性J氏が語る。
「父と一緒に不動産、預貯金、現金、有価証券、生命保険と財産項目を紙に整理していきました。その過程で問題になったのが『小さな物』の扱いです。カメラや家具といった価値のありそうなものだけでなく、ガラクタに見えるような木彫りの置物でも、『これは価値がある財産だ』と言って譲らない。埒が明かないので、一切合切の物を含めた『家財一式』という項目を作りました」
だが、この判断は失敗だった。
「父は遺言書で『家財一式は長女に渡す』としていたため、相続時にカメラや家具のみならず、テレビやパソコンなどの家電や貴金属類まで長女が持って行ってしまったのです。父親の面倒を見てこなかった長女が希少価値のありそうな物まで持って行ってしまったことに思いは複雑でした」
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