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《まじめの功罪》カスハラや自粛警察に見られる“不健全なまじめさ”から脱却する方法

脳を健全にする日々の習慣とは

 では、実際どんな脳のトレーニングをすれば、健全なまじめさを手に入れることができるのだろうか?

「何だ、そんなこと?と言われるかもしれませんが、『感謝の気持ちを持つこと』です。これが最も取り入れやすく、効果も期待できます。

 あまり大げさに構えず、感謝のタネを探す程度でOKです。たとえば、私はコンビニのレジの店員さんに『ありがとう』と言うのを習慣にしています。店員さんがいてくれるからいつでもモノが買えるわけだし、元気に挨拶してくれるとうれしい気分にもなれます。

 以前の私なら『こちらは金を払っているんだから当然だ』くらいに思っていたのですから、ずいぶん変わりました(笑い)」

 なぜ、岩崎さんの心境に変化があったのだろうか。

「信頼できる妻や仲間との出会いがあったからです。

 私の父は家庭内暴力を振るう人で、包丁を振り回して私たち家族を脅すこともありました。キレやすい人は人生のどこかでつらい体験をしたかたが多いのですが、かつての私もそうで、カスハラまがいのクレームをつけたことも(苦笑)。ずっと人を信頼できずに生きてきました。

 ただ、いろいろな研究論文を読む中で、『人間の脳には《集合知性》という機能が格納されていて、深い信頼関係で結ばれた仲間が心をひとつにすると、《天才知性》を超えるパフォーマンスを発揮できる』という論文があり、おおいに興味をそそられました。ちょうどその頃(約18年前)、妻のクレアや一生の仲間と出会った時期で、それまでの私には経験したことがなかった、リアルに脳が活性化されていく実感があったからです」

 実際、感謝の気持ちを持ち続けることで成長志向となり、自制心が増す【*1】、物事を前向きに捉えるよう脳が活性化する【*2】という研究結果も出ているという。別の研究では、ダメ出しする人よりも、感謝の気持ちを感じられる人の方が、成長意欲が高く、心が折れにくい【*3】ということもわかっているそうだ。

「感謝をする相手は家族でなくても、神社仏閣でも、ペットでも、推しでもOKです。見返りを求めるのではなく、常に感謝の心を持ち続ける普遍性が重要。毎日の習慣にできれば、大きな一歩です」

「自分が嫌でたまらない」「あの人が許せない」といった負の気持ちを育てるより、「ありがとうのタネ」を探した方が、脳も幸せになれる。

【*1/米国・ノースイースタン大学のディケンズ博士らが105人の被験者に対して実施した研究による。出典:『科学的に幸せになれる脳磨き』】
【*2/韓国・ヨンセ大学のキョン博士らの研究による。出典:『科学的に幸せになれる脳磨き』】
【*3/米国・カリフォルニア大学バークレー校のブレインズ博士らの研究による。 出典:『科学的に幸せになれる脳磨き』】

【プロフィール】
岩崎一郎さん/脳科学者。米国ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所の准教授を経て帰国。「国際コミュニケーション・トレーニング」を創立し、最新の脳科学にもとづく経営やリーダーシップ育成などを行う。最新著書に『30日で人生がうまくいきだす脳の習慣』(サンマーク出版)。

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2024年8月22・29日号

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