河合雅司「人口減少ニッポンの活路」

《大幅値上げ不可避》水道事業体の経営を圧迫する人口減少による利用者不足 「地方都市ほど水道代が高くつく」現実

地方ほど水道代が高くなる可能性も(イメージ)

地方ほど水道代が高くなる可能性も(イメージ)

 月額3317円が、25年後には4895円に──。EY Japanと水の安全保障戦略機構事務局が調査した「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024年版)」によれば、分析対象の96%にあたる1199事業体が2046年度までに値上げが必要になるという。平均値上げ率は48%で、全体の約6割となる762事業体では30%以上の値上げが必要になる。物価高が続く中で、水道代値上げは家計へのダメージが大きいが、さらに都会よりも地方ほど深刻になると懸念されている。なぜなのか?

 人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。

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 水道料金の値上げが拡大している直接要因は施設・設備の更新費用がかさむためだが、値上げ率の見通しがここまで大きな数字となる理由はそれだけではない。収入が減ることも要因だ。

 収入はすでにかつてと比べて減っている。節水機器が発達・普及したことによって家庭での1人あたりの使用水量が少なくなったためだ。今後はこうした事情に加えて、人口減少による利用者数の減少が追い打ちをかける。高齢者の1人暮らしも増える見通しで、1軒あたりの使用料も減っていく。幾重もの使用水量の縮減に見舞われる見通しなのだ。

 総務省の資料によれば、料金徴収の対象水量である有収水量は1日あたり4100万立方メートルだった2000年をピークに減少しており、2050年には2700万立方メートルと、3分の2程度の水準にまで落ち込む見通しとなっている。

 水道事業体の給水人口規模別にみると、小さい事業体ほど人口減少率が大きい。2010年と2040年を比較すると、給水人口が1万5000人未満の事業体は全国平均(16.1%)の2倍を超える減少率になると推計されている。

 水道事業体の経営悪化に追い打ちをかけているのが、電気代の高騰だ。浄水場から送水するポンプを動かすのにかなりの電力を消費する。人件費や資材費の値上がりも重荷になってきている。

 さらに懸念材料がある。水道事業の担い手である技術職員の不足だ。前回記事〈水道料金、2046年度までに平均48%値上げの推計 施設・設備の老朽化が急速に進み、耐用年数超え管路の更新が追いつかない〉で指摘したように、施設の老朽化が著しく法定耐用年数超過管の割合は増加していくのに、それに対応する担い手は減るので追い付かない。老朽管から勢いよく漏れ出した水が高々と噴き上がる光景を時おり報道などで見かけるようになった。

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