「広域化」も容易ではない
このように水道事業体は複合的な要因で事業自体の持続可能性が懸念される苦境に陥っているが、長期的に見て影響が最も深刻なのは人口減少による利用者不足であろう。他の要因と異なり、永続的に続く。
今後は、給水人口や人口密度の低い事業体ほど料金の値上げ率は高くなりやすい。
「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024年版)」は、全国の水道料金格差は2021年度の実績値8.0倍から、2046年度には20.4倍に広がる見通しとしている。北海道、中国、四国の料金値上がり率が大きく、50%の値上がりとなる事業体が4~5割程度になるというのだ。給水人口規模が小さくなるほど50%以上の高い率での値上げが求められると予想している。
マンションが林立する人口密集地とは違い、住居が点在する過疎地域では水道管の距離を長くせざるを得ない。それを維持管理するのに見合う収入が得づらいことが背景にある。
だからといって、広域化など規模を大きくすればよいということではない。
それ以前の問題として、都道府県単位化をすること自体のハードルが高いのだ。すでに水道事業体ごとに料金格差がついているため、水道料金が下がるところと上がるところに分かれる。料金が上がる事業体は利用者の合意を得るのは難しいだろう。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、最新の統計データに独自の分析を加えた未来図を示し、これからの日本が人口減少を逆手に取って「縮んで勝つ」ための方策を提言している。