河合雅司「人口減少ニッポンの活路」

地方議会で“無投票選挙区”が拡大中 議員報酬の少なさ、男女格差など「立候補のハードルの高さ」よりも深刻な「なり手不足」問題

地方議会の“無投票選挙区”が拡大する背景とは(イメージ)

地方議会の“無投票選挙区”が拡大する背景とは(イメージ)

 地方議会では「無投票当選」や「定員割れ」が増えてきている。全国町村議会議長会が設置した有識者会議の報告書によれば、2019年5月~2023年4月の4年間に行われた町議会議員選挙のうち無投票および定数割れは254町村(27.4%)だった。さらに、これまでのペースで増え続けたとすれば、2023年5月~2027年4月までの4年間で全体の34.1%にあたる316町村が無投票になると予測している。投票したくても選挙にならない──なぜそんな事態が広がっているのか?

 人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。

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 無投票選挙区が増えるのは立候補者が少ないためだが、その理由としてこれまでは「立候補へのハードルの高さ」が挙げられてきた。例えば小規模議会に見られる議員報酬の少なさだ。

 2019年の地方統一選挙で無投票当選となった地方議会の59.6%は10万円台である。「町村議会議員の議員報酬等のあり方検討委員会」の報告書は、17万6000円未満では無投票当選率が高まるとしているが、これでは資産家か、もしくは何らかの副収入を当て込める人でなければ立候補は難しい。

 議員報酬の少なさとも密接に関連するが、議会の開催時間が平日の昼間中心となっていることも要因だ。

 兼業が容易ではない会社員などが立候補するとなれば、仕事を辞めざるを得ない。小規模な町村の場合、立候補すると家族や親族も注目されるため反対されることも多い。民間企業などでは定年年齢の引き上げが進んでおり、「定年後に議員を引き受けるだけの気力や体力が残っていない」という人も増えている。

 一方、女性が立候補しづらい雰囲気が残っているとの指摘も多い。いまだ「政治は男性のもの」といった固定的な性別役割分担意識が残っている地域は多く、進出を阻んでいるのだ。家庭生活などと両立するための環境整備の遅れも目立つ。地方議会における女性議員の割合(2023年末)は都道府県議会が14.6%、市区議会19.9%、町村議会13.6%と極めて低い。

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