地方議会を中心に増え続けている「無投票当選」や「定員割れ」。その要因として「立候補へのハードルの高さ」が指摘されている。議員報酬の低さや兼業の難しさ、男女格差などが「ハードル」だというが、より深刻な影響を与えているのは「人口減少」だと河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)は強調する。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題の河合氏が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
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無投票当選が広がると、議員の年齢は高くなる。当選した議員(無投票当選以外も含む)のうち60歳以上が占める割合は、都道府県議会が41.9%、市区議会が53.8%、町村議会にいたっては77.1%となっている。
議員の高年齢化が進むのは、若い世代で政治への無関心層が広がっていることもあるが、それ以前の問題として若い世代の絶対数が少ないためだ。住民の過半数が高齢者という“限界自治体”が増えているが、高年齢の住民が多い自治体において立候補者や当選者に占める高年齢層の割合が増えやすくなるのは自然なことだ。
しかも、高年齢議員の多さは、多選議員の多さと密接に関連する。60歳以上の議員の中に「新人議員」がいないわけではないが、多くは若い頃から当選を重ねてきたベテラン議員である。
ベテラン議員ともなれば、これまでの実績をもとに盤石な政治基盤を築いてきている人が少なくない。新人がいきなり立候補してもなかなか勝ち目を見いだせないのが現実である。結果として新人が出馬を諦めたり、避けたりする傾向が生まれ、無投票当選を増やしているのである。
地方での選挙がベテラン議員に有利に働いていることを裏付けるデータがある。2023年時点の調査では、町村議会は52.5%が在職年数8年以上である。このうち10.1%は24年以上だ。都道府県議会と市議会における在職年数20年以上の多選議員はそれぞれ14.4%と12.0%に及んでいる。全体として地方議員は在職年数が長くなりやすく、そのために高年齢化しているということだ。
もちろん、在職年数が長いことが問題というわけではないが、人口減少と相まって地方議員のなり手の不足を生み、無投票当選を招いているのである。