問われているのは「議会」ではなく「市町村の存亡」
地方議会では、かねて在職年数の長い議員が多かった。地方独特の“暗黙のルール”が存在していたためだ。
農業主体の過疎地を中心に地方議員は「名誉職」とみなされてきた。長く地域に貢献してきた年配者を当選させ、一定期間で次なる「地元の名士」に引き継ぐ“議席の継承”が行われていたのだ。こうした地区では新人はなおさら立候補しづらかった。
しかしながら、人口減少でこうした“暗黙のルール”も続かなくなってきている。人口減少で「地元の名士」と呼ばれる後継者候補までもが減り、あるいは高齢になりすぎて立候補を断られるケースが増えているのだ。
議員のなり手不足を解消するための方策について、全国町村議会議長会の報告書は、立候補のために休職や副業制度の整備、地方議員の被選挙権年齢の23歳への引き下げ、公務員の立候補制限や他の自治体職員との兼職禁止の緩和などを挙げている。
多くの地方議会関係者には議員報酬のアップや女性議員を増やすことがカギであるかのような意見も少なくないが、日本全体の人口減少は止めようがなく、そういった小手先の政策では解決しない問題なのである。
「議会の活性化をどうするか」ということではなく、市町村の存亡が問われているのだ。必要な立候補者が確保できなくなるほどに人口が激減する自治体が増えていくことが予想される。
政府は、近未来を見据えて地方自治の在り方を根本的に考え直す時期に来ている。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。